やじろべえ

ヤマシタ アキヒロ

やじろべえ

くちばしの先を持つと

なぜかバランスの取れる

鳥型のやじろべえがあった


私はそれが好きで

日がな一日

指に乗せて眺めていた


翼を広げ

華やかな格好だが

いちばん大事なのは


きっとその嘴に

鳥は存在のすべてを

託しているのであろう


私はつねに考える

その人の心の重心は

どこにあるか


その人が何をいちばん

大切にしているか


鳥に嘴があるように

人にも心がある


私はかつて

見せかけのその人の

イメージに甘え


その人の一番

大切なものを

傷付けてしまった


その人は

黙って離れて行った


以来私は

そっと心で

尋ねることにしている


あなたの大切な

嘴はどこですか?


       (了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やじろべえ ヤマシタ アキヒロ @09063499480

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ