第2話 裏切りの銃声
夜の帳が下りた東京湾。煌びやかなネオンが海面に反射し、幻想的な光景を創り出している。その中心にそびえ立つ巨大な人工島、鯨鯢。そこは、日本の経済を牽引する鯨井グループの本拠地であり、最先端技術の粋を集めた、まさに未来都市だった。
その夜、鯨鯢の中枢、鯨井グループ本社ビルの最上階にある研究室では、天才エンジニア、鷹山が、巨大兵器「鯨鯢」の最終調整を行っていた。彼の指先がキーボードを叩くたびに、巨大なスクリーンに映し出された鯨鯢のデータが、複雑な光の模様を描き出す。
「あとわずかで、完成だ……」
鷹山は、呟いた。彼の瞳は、スクリーンに映し出された鯨鯢の雄姿を、熱い光を宿して見つめていた。鯨鯢は、彼の才能と情熱の結晶であり、彼にとって、それは単なる兵器ではなく、人類の未来を切り開く希望の象徴だった。
その時、研究室の扉が、静かに開いた。そこに立っていたのは、鷹山の同僚であり、親友でもある鯨井だった。
「鷹山、まだ作業をしていたのか。もう遅い、休んだ方がいい」
鯨井は、鷹山に優しく声をかけた。彼の表情は、いつものように穏やかで、鷹山を気遣う優しさに満ちていた。
「ああ、でも、もう少しで終わるんだ。鯨井、お前も手伝ってくれ」
鷹山は、鯨井に背を向けたまま、そう言った。彼は、鯨井を信頼していた。鯨井は、彼の才能を高く評価し、常に彼を支えてくれる、かけがえのない存在だった。
しかし、その時、鷹山の背中に、冷たい感触が走った。それは、鯨井が手にしていたピストルの銃口だった。
「鯨井……?」
鷹山は、驚愕して振り返った。そこには、先程までの優しい表情とは打って変わって、冷酷な眼差しを向ける鯨井の姿があった。
「すまない、鷹山。だが、お前には、ここで消えてもらう」
鯨井は、そう言い放つと、躊躇なく引き金を引いた。銃声が、静かな研究室に、けたたましく響き渡った。
鷹山は、胸を撃ち抜かれ、その場に崩れ落ちた。彼の瞳は、信じられないものを見るように、鯨井を見つめていた。
「なぜだ……?鯨井……」
鷹山は、かすれた声で呟いた。しかし、鯨井は、何も答えず、冷たい視線を鷹山に向けたまま、研究室を後にした。
鷹山は、意識が薄れていく中で、鯨井の裏切りの理由を考えていた。なぜ、鯨井は、彼を裏切ったのか?なぜ、彼は、鯨鯢を奪おうとするのか?
そして、鷹山の意識は、闇の中に消えていった。
その時、研究室の奥に設置された巨大なカプセルの中で、鯨鯢が、静かに起動を始めていた。その巨大な目が、暗闇の中で、怪しく光を放っていた。
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