出会い

 『光』と行動することにした道中、私達はあらゆる世界について話した。

 あの子は様々なことを教えてくれた。

 人類の生活様式、常識、何なら国家間の対立関係まで。

 実際には二百万年前の時からの予測と実際に見た推察からだそうだが、あの子の予想は外れはしないだろう。

 そして共に歩き続けて約五年が過ぎたある時、私はふと疑問に思ったことを彼女に伝えた。


「……『光』は何故世界を渡り歩いているの?」


 私は『神』が人類と積極的な関わりを持つようになった到底数えるのも馬鹿らしくなる年月、疑問に思い続けていたことがある。

 『神』、それは『秩序』を守るためにある。

 弱い『神』は敵となりうる可能性のある人類と多く関わりを持つのは危険であるし、さらに最上位神であっても他の『秩序』に影響をもたらす為良くないのだ。

 その問いに『世界』を一番長く見てきた最上位神である『光』は答えた。


「なんでってほんとあなた変わったわねぇ……」

「質問に答えて」

「おぉ……怖い怖い……そうね、人類を見てて面白いとは思わないかしら」

「……と、いうと?」

「なにもそのままよ、『創造』であるあなたは物を創ってからその後を考えたことある?」

「……」


 考えたこともなかった、私は『創造』、ただ全てを創る、それだけの存在だと思っていた。


「私はね〜、自分のもたらす『光』の行く先に興味があるの、ただ、そういうこと……」

「……私にはわからないな」


 そういう会話をしながらこの私が知ろうとしなかった『世界』のある片隅を歩く。


 ……


 あれから更に数年がたった。私がこの世界の神々と人類の関わりを知りながら歩くことに付き合ってくれた『光』は私はもう必要ないという様な事を言ってどこかまた別の世界へ向かってしまった。

 街にたどり着いてから私は街に目を向けた、『光』の言う通り自分の力がもたらした物は何かを見るのは少し良いと思った。

 街の建物、道具、人類に至ってまで私の『創造』が創り出したものと考えると何かと気分が良くなる。

『光』からは様々な話を聞いた。私が三年間過ごしているこの街の外のこと、更には別の世界の話まで、あの子は楽しそうだった。

 ……私も少し楽しくなってきた。


「……キャッ」


 その時裏通りの方からかすかな悲鳴が聞こえた。

 私もこのときは気分が高揚していたのだろう、気になって裏通りの方に向かってみた。


「大人しくこっちに来い!」

「嫌……です……」


 行った先では少女が誘拐されかけているというではないか、この世界でそういうことは日常茶飯事だが私は面白がって助けようとした。

 そうして誘拐犯ににじり寄る。


「っ! ……何者だてめぇ!」


 私は無言で誘拐犯の足元の地面から鉄の杭を創り出す。


「がっは……」


 勝負は一瞬で着いた。無理もない、所詮相手はただの人類だ。

 私はそんなもう生きてはいない人類を尻目に先ほど小さい悲鳴を出していた人類の

 少女に歩み寄る。


「かみ……さま?」


 それを聞いた瞬間私の動きは止まった。

 何故気づかれた?

 今までなかった状況に危機感を感じる。

 このままだと私はどうなるのか、いや、この少女が私に何をされるか分かったものではない。

 私は深呼吸をして話しかけた。


「貴方の名前は?」

「わたしのなまえ? なまえはトワ! かみさまはなんていうの?」

「私は『創造』を守る神。名前は……好きに呼ぶといいわ」

「じゃぁあなたのなまえはソウね!」


 その時私は初めて人類から名前を付けられた。

 創造だからソウなのだろうか、安直だ……

 この世界の外側に漂うだけだった私はこの名によってこの世界に繋ぎ留められた。


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