人類に扮する『創造』
私は『狐』からこの世界における神々と人類の主な暮らしを知った。世界を越えて存在できる中位神の言葉だ、信用には値するだろう。
「……以上でございます」
「ありがとう、重要な話を聞くことができた」
「いえいえ、私如きが役に立つなど…」
「謙遜するな、最後に一つ聞いておく、人の町はどこだ?」
『狐』から聞いた人の町の方向に向けて私はまた歩き出した。
やはり自然という『秩序』の集合が作り上げる世界は美しい。
ただ……
この『世界』には『精霊』と呼ばれる存在や、それに準ずる者がいる。その中でもあまりよろしくない人類の感情なが生みど出してきたもの、つまり亡霊やら悪魔と呼ばれる者からの視線が痛い。いや実際に痛くはないのだが。物陰から私をじっと見つめてくる。私には手出しをすることはできないが。邪魔なことには変わりはない。
……
しばらくすると人の街が見えてきた。
私の姿は人類とは変わらないから怪しまれはしないだろう。
そう思い町へと入る。
……人類の町か、私に猶予はいくらでもあるのだ、いっその事人のふりをしてみるのも良いかもしれない。
『世界』の情報とあの『狐』からの情報を使って人間として生活しやすい方法を探る。
どうやら”冒険者”と呼ばれる職業がこの世界にあるらしい。
それになるための方法を『世界』の情報から引き出す。
……
”ギルド”と呼ばれる場所に来た、ここで登録ができるらしい。私はこの世界に存在する”エルフ”という人類に扮して登録をすることにした。
「冒険者登録はこちらです」
事務的な声に呼ばれて私は受付と思わしき場所に向かう。
「では、早速登録を始めますね。おや、エルフとはなかなか珍しいですね~
お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「名前はない」
「……名前なしでの登録でございますか?ギルド証の紛失には気を付けてくださいね」
そんな登録をすぐ済ませた、あいにくと一般の人類と同じくらいの力に抑えていたため面倒ごとは起きなかった。
……
冒険者という存在になってから約三年が過ぎた。
世間での私の評価は黙々とソロで仕事をこなす名無しの凄腕エルフという事になっているらしい。
「……つまらない」
魔法によって狩られた魔物を見て私は言葉をこぼす。
この三年間、この世界の魔法という物を使ってこの世界で魔物といわれる動物を狩っていったわけだが、あまりにも弱すぎた。
人類はなぜこのような弱いものに苦戦するのだろうと疑問だった。
仕事をして社会を維持する、それが人間の本質だという事は理解した。が、それ以上のことはまだわからなかった。
……
「……どうしてこんなところに『創造』がいるのかな?」
「……『光』か」
「『創造』はなんで人類のふりをしているの? あなたそんなことするような神じゃなかったよね?」
こいつは『光』遍く世界を渡り歩いている最上位神の一柱。
恐らく神々で一番の気分屋だろう。
「『破壊』に提案されただけ、興味が湧いたから」
「あらぁ? 私の知ってる『創造』はそんな事に興味が湧かないはずっだったのだけれども、私が世界を渡り歩いてた数億年の間に『破壊』もあなたも随分と変わったように思うけど」
『光』は首をかしげる。
「確かに変わったのかもしれないわ、貴方は昔からぶれてないみたいだけど」
ここであの子に聞いてみるのもいいかもしれない。人類の事を。
「ねぇ、貴方は長い間人類を見てきてどうだった?」
「あら? 人類に興味を持ったのは何となくわかってたけど聞いてくるとは思わなかったわ」
心外な、この状況で察しが悪い子だ……
「なら案内しますよ、この世界は大体二百万年くらい前にかなり歩きましたし」
「よろしくね」
『破壊』と一緒に来なくて右も左もわからず後悔したから土地勘がある『光』と一緒に行動したら何か変わるかもしれない……
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tips:この世界について
この世界は私たちのよく知るラノベ的な世界です。
いわゆる剣と魔法の世界という物。
魔物を魔法や剣で狩って生計を立てる”冒険者”という職業がある世界。
文明レベルは私たちの世界の中世前半にあたります。
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