『みだらのひも』
やましん(テンパー)
『みだらのひも』 前編
首都の中心、『
それでも、地方都市の3倍の相場である。
さらに、首都に入るには、入首都税として1万ドリム払わなければならず、深夜12時を越えて滞在するには、首都滞在税、一泊1万ドリムが必要になる。2泊以上だと、いささかの割引がある。
ただし、ひと月以上滞在するには、長期首都滞在税5万ドリムが上乗せされる。
住んでいる自治体によっては、補助が出るところもあるが、ぼくの住む街は貧乏性で、それがない。
実を言うと、首都とは、トップ同士が、かなり仲が悪いと聴いた。
まあ、今回は、個人的に大好きな、シベリウスさまの演奏会を聴きに来たのが主な理由だが(地方ではまずない。)、生まれ故郷にも寄るつもりである。もう年だし、これが最後の機会だと認識している。
『新首都法』が、できてからは、あまりにお金がかかるため、仕事で来た以外はなかったのである。しかし、仕事で来て、うっかり寄り道したりすると、罰則があるから、楽しめない。出張中の観光は基本的に禁止されている。政治家は別である。彼らには、観光も職務である。
身体にIDチップが埋められているから誤魔化せない。
ただし、自費で近くの有名なレストランに入るくらいは許されるが。
さて、ホテルの部屋は、きわめて、殺風景である。
窓も開かないし、景色も見えない。
景色が見える部屋だと、首都光景鑑賞税が、1万ドリムかかる。あまりに、あほらしい。
ただし、テレビ画面は壁一面に張り付いていて、やたら、でかかった。
こいつは、実態画面であり、三次元的に見ることができる優れもので、首都の売りである。地方では放送されていない。
これは、なぜだか無料だったが、成人向けプログラムは、1時間2000ドリムである。予告編だけは、無料で視聴できた。なかみは、むかしと何も違わないが、なにしろ立体映像であるから、迫力はある。まあ、中身は、違う必要性はないのだろう。また、世界的な映画監督が製作したバージョンは、一本1万ドリムである。やめにした。
内戦と第三次世界戦争で、旧首都は更地になった。
銀河連盟が提供してくれた技術で、放射能除去はしたうえ、人工地盤を敷き詰め、その上に新首都を築いたのたである。
だから、地下ふかくには、その遺骸、遺跡、が、いまだに、あるはずである。
地下鉄や、排水設備など、使えるものは改修して再利用されてもいるが、しかし、埋もれている旧首都の実態については、ほとんど公表されていない。
ここにきて、まさしく、お決まりのゆうれい話しや、怪物が出るとか、未知の生物が現れるとかのうわさが絶えないが、首都政府も連邦政府も、そんな話しは、否定している。
しかし、この『場秋地区』がある中央市長は、唯一の革新派の勇士であったからか、そうしたオカルト話があることを、肯定していたのだった。
だから、深夜の散策は、『メインストリート以外は、お勧めいたしません。』と、断言していたのである。
ぼくは、もとより、そんな気はないが。
豪華絢爛たる歓楽街も、もちろんあるが、お金がかかってたまらない地域である。
金持ちは、いくら利用しても、勝手であるが。
なわけで、むかしながらのコンビニでお弁当を買い、おとなしく部屋に帰ってきた。
演奏会は、明日である。
さすがは、首都だと誉めてあげたいのは、お弁当の質が高い。
地方都市は疲弊してしまい、こんなお弁当は、なかなか、手に入らないのだ。ま、核戦争をやっちまったんだから、無理もないかしら。
それでも、よくなった方である。
なんでも、こんど、『オーケストラ』を宇宙に飛ばす計画が進んでいるらしい。ぼくには関係ないが。
さて、室内なのだが、なにやら、気になるものがある。
テレビから、かなり離れた壁に『みだらなひも』という、プレートが下がっている、マダラ模様のひもが、垂れ下がっていた。
『はて〰️〰️💨 なんだろう?』
と、しばし悩んだが、周囲にはなんの解説もないようだ。
そこで、ホテルの『定款』と『ご案内』を眺めてみたのである。
こうしたものも、『定款』については、どこでもびっちりと書き込まれている訳だが、『ご案内』については、ホテルによって、多少の差がある。
大都会のビジネスホテルは、わりに、あっさりとしているが、地方都市では、観光案内まで、これでもかあ! と、載せているホテルもあったりする。
しかし。
『みだらなひも』に関しては、ない!
むかしでいう『スマホ』、今でいう『コミホ』は、地域外の住民が首都で使うと、倍近い料金を徴収されるのは分かっていた。『首都増し』である。別契約をしていると違うことがあるが、ぼくみたいにめったに首都に入らないものには、明らかに損になる。
差別に違いないが、首都の品格を圧倒的に上げたい首都首相の趣味である。
かつて、東日本の代表である、トウキョウベイ連邦と、西日本の優たるオオサカキョウト・ナラコウベ連盟が、世界大戦とは別に、国内核戦争をやったわけだ。
まったく、あほらしい時代だった。
まあ、トウキョウベイは、そもそも、財力が違いすぎだ。
戦争で、みながスッカラカンになっても、なぜだか大量の資産が残っていた。隠していたらしい。新埋蔵金と言われる。連邦政府が絡んでいるともいわれるが、誰も真実は、話さない。しかし、そのおかげか、復興も早かった。
まあ、それは、置いといて、つまり『みだらなひも』は、なぞのままだ。
フロントに問い合わせればよいのだが、一回の問い合わせには、1000ドリム掛かるとか。これも、『首都情報条例』によるらしい。もしも、『回答できません。』でも、同じである。
こっちのほうが、あほらしい。
フロントは、AIさんである。AIさんに苦情をつけるなんて、神様に逆らうようなものなのである。
容赦なしなのである。
だから、これについては、もう、気にしないことにした。
🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍🐍
で、その深夜のこと。起こるべきは、また、起こったのだ。
ぼくの『コミホ』が強制鳴動した。
『じしん、きた。じしん、きた。じしん、きた。』
そうして、間髪を入れずに、ビルがひっくり返るような揺れがきた。
『直下型かあ!』
古めのホテルが、崩れ落ちることは、もはや、明白であった。
もう、すぐに思い付く、やり残したことは、『みだらなひも』を、引くことである。
後編に続く。🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇……………伏してねがいたてまつります。🈳😢
🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇
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