読んでいて、何度か
「これは……私はいま、試されているのか?」
と思いました。
笑っていいのか、引くべきなのか、難しい顔をすべきなのか。
だが、まさにその「揺らぎ」こそが、この物語の核心なのかもしれない。
本作は、エロと風刺とナンセンスを前面に掲げながら、読者の反応そのものを演出に取り込む「読者を舞台に上げてしまう劇」である。
それは、皆さんのコメントやレビューを見ていただければ分かります。
登場人物たちの愚行にニヤつくか、辟易して眉をひそめるか――そのひとつひとつが、この作品の筋書きに書き込まれているようにさえ思えてくる。
つまり、読者はもはや観客ではなく、キャストの一人。
ついつい先へと「読まされる」感覚。
「どこまでが意図で、どこからが悪ノリか」と迷う感覚。
だがその全てが、あなたの読み方をあぶり出すために用意された装置だと気づいたとき、この混沌はある種の清涼さを持って迫ってくる。
『王将戦』から始まった一連の作品群は、こと『芥Ⅰ』~『芥Ⅱ』に至り、読む者の姿勢を問い返す鏡として磨きがかかる。
あなたはこの一見茶番に見えるものを、どんな顔で読むのか?
その表情こそが、作品の完成を支える最後のパーツなのかもしれない。
さぁ、手を取って。
オドルンダヨ。オンガクノツヅクカギリ。
by『 ダンス・ダンス・ダンス』
カクヨムの鬼才、青山翠雲さんの、芥シリーズ第2弾です。
さらにパワーアップして、冒険もお色気もてんこ盛りになっております。
地球の危機を救うために、青山翠雲氏が、戦艦武蔵を改造した宇宙戦艦ムサシで、エーアデ星に向かいます。あっちも大好きな翠雲航海長、妖艶な盛由紀隊員に懸想しつつも、エーアデの美人看護師スジャータとも、あれこれあり、最後は徒乱富(トランプ)大統領との超困難なディールをまとめ、帰途に就きます。ああ、これで終わりか、よかった、と思ったら、最後の最後で、読者大喜びの見せ場が! わーい!
とまあ、あんまりお話しするとネタバレになりますので、この辺にしておきますが、翠雲氏の筆力、構成力、そしてよく練り込まれた世界観、これはもうお見事としか言いようがありません。よくここまで複雑な物語をまとめ上げたものだと、感心致します。
正直、翠雲氏であれば、お笑いやお色気に走らなくても、社会派のドラマや純文学など余裕で書けそうです。能力の発揮方向が「?」という気がしないでもないですが、きっと彼の好みなんでしょう。そして、それが鬼才たるゆえんと言えましょう。もちろん私は大好きですよ。
なかなかに読み手を選ぶお話しだと思いますが、現在の世界情勢に詳しく、かつ昭和に少年時代を送り、お色気とお笑いの好きな方、にはクリティカルヒットすること間違いなしです。
わたくしはとてもお勧めです。
ここがおすすめレビューを書くところなのは重々承知をしているのですが、先に謝っておきます。
本作は文句なしにおススメです! とは言い難い中編小説です。
『良い子には見せられない』シーンの連発ですし、アホらしくも堅苦しいという不思議な作風で、読者を混乱に導きます。
というと、さも無茶苦茶な小説のように聞こえますが、読み込んでいくにつれ、不思議と、実は非常に深いテーマ性のある完成度の高い作品なのではなかろうかとも思えてきます。
例えるなら、高名な書家の残した文化財級の書を見るような読後感です。一見何が書いてあるのか分からないように見えて、実は凄さが分からないのは見ている自分が至らないからなのではなかろうか、という気分になります。
複数回読もうという気持ちになる読者がいるのも納得です。
コミックでいえば、漫画太郎といった所でしょうか。
唯一無二の読書体験が出来るかもしれません。
『良い子以外は』チャレンジあれ。