第3話

亮が連れて来られたのは、未解明事象監理機構の長官室だった。

SF映画にでも出てきそうなデザインの部屋は、重苦しい空気で満ちている。


部屋の主である桐島麗華は、顔の前で両手を組み、二人を覗き込むように見据えながら、ゆっくりと口を開いた。


「一部始終は見せてもらった――これは由々しき事態だ」


桐島の迫力に息をのむ亮。


「――君が消したものが何かわかるか?」

「さ、さぁ……悪霊? とか?」


恐る恐る答える彼に、桐島は重々しく言った。


「あれの名は"闇喰い"と言う」

「闇喰い……」亮はその名を繰り返した。


桐島は志堂寺を一瞥したあと続ける。


「我々、未解明事象管理機構UPMAは、都市伝説や怪異現象といった未解明事象の調査・解明・監理を目的とする非公式政府機関だ。主に一般の警察では手に負えない超常的事件を扱っている」


「は、はあ……」


「怪異を喰らう怪異――、闇喰いは最高位調査員Endgameである彼女、志堂寺瑠果に憑いていた最強の怪異だよ」


――何だこれは。

見たところ政府のお偉いさんのような強面の女性が、真面目な顔をして怪異だのエンドゲームだの言っている。


たしかに怪異は存在する。それは亮も身をもって知っていた。


だが、それはあくまで自分の手の届く範囲の出来事で、こんな大がかりな組織的な問題ではないと思っていた。


しかも、こんな可愛らしい女子学生がエンドゲームなどと厨二的なコードネームで呼ばれているなんて……。


亮は横目で確認するように志堂寺を見る。

彼女は前を向いたまま表情を変えない。


「理解したまえ、多々良亮。君は我々が持つ"切り札"を消したのだ――」

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