第2話 資料集めの不明な理由

「ご依頼の資料集めは出来たよ」

「ありがとう」


 資料集めの最終チェックをするメアリー。

 首を傾げながら独り言をぶつぶつ。


「サントス君」

「なに?」

「この依頼、おかしい」

「どこが?」

「勘」

「はぁ…出た出た」


 メアリーに呆れるサントス。


「真面目に仕事して」

「やってるもん!」


 たこ焼き1つ入りそうなサイズに膨らむ両頬。

 可愛い…なんて思ってしまったサントスだが、がぶりを振って忘れることにした。


「依頼人、あと2時間で来るよ」

「バカバカサントスー!」


 責めに責めたメアリー、それを気にしないサントス。

 コンビネーションはバッチリのようだ。



「メアリー嬢、サントス少年」

「あっ、ごきげんよう、ルヴェルさん」


 紳士な叔父様が来た。依頼人だろう。


「依頼した資料は?」

「こちらになります」

「ありがとう」


 メアリーは紙袋に入れた資料をルヴェルに渡した。


「不備があればまた来て下さい」

「ありがとう」


 ルヴェルは静かに出て行った。


「おかしな点のままなの?」


 サントスはメアリーに疑問をぶつけた。


「大丈夫大丈夫、先手は打ったよ」

「?」

「私は危ない橋を渡らないのさ!わはっはー!」


 首を傾げたサントス。



 後に分かったこと。

 新聞にはルヴェルが話題に挙げられていた。

 陰謀論や政府へのデタラメをでっち上げようとしていたのだ。

 だが、メアリーが管理兼住居にしているこの大図書館は、ありとあらゆる世界中の本は全てある。

 そして、政府が本来ならば管理しなければならない機密資料等は、全てこの大図書館にある。

 その理由は歴代の管理人が管理していたから、政府が手元に置いておくと万が一の時に対応出来るか定かではないとのことで、大図書館に保管しているという理由は表向き。

 本当の理由は…おっと、これは話せない。

 またの機会に。

 だが、これだけは言える。


 歴代の管理人は、のみ。

 学歴はすっ飛ばす。偏差値が高ければそれでいい。

 だからメアリーは選ばれたのだ、管理人に。

 史上最高の天才とも言われていて、メアリーを超す天才少女が現れなければ、彼女に任せる方針。

 長く務めるということで、彼女に匹敵する偏差値または次いでの偏差値を持つ少年はいなかったが、とある孤児院で見つけた将来性のある少年を見つけた。

 それがサントスなのだ。


 メアリーとサントスは、政府の国の命令で、働いている。

 メアリーは勘づいてはいるものの、本質には辿り着いてはいない。

 サントスは全く。ただ学を身に付けばどうなるか。

 2人を管理する国は、2人を今後どのように導くのか。

 誰にも、分からない。


「くしゅん!」

「風邪?」

「噂してる」

「いやいや」


 平和な会話だな、良かった良かった。


 ところで、あなたは誰かって?

 自己紹介が遅くなりましたね。


「こんにちは」

「あっ!」

「あぁ!」


「「シュミット先生!!」」


 僕の名前はシュミット、2人の里親のような立場であり、本当は2人を監視する官僚。

 2人の様子を見に来た。戻り次第報告する。


「シュミット先生聞いて!危ない橋を渡りかけたの!」

「なんだいその話?」

「この叔父さん騙したの!」

「シュミット先生に言ってもさ」

「サントス君は黙ってて!」

「2人とも落ち着いて、メアリー聞くから興奮しない」


 平和だな、本当に。

 彼等に幸あれ…。


 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編 大図書館に眠る少女 奏流こころ @anmitu725

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ