第十三章 静寂の先、未来を掴む

武器密売組織との激戦を終え、桐人は自身の力の進化を確かに感じていた。銃弾を素手で掴むという、常識を超えた行為。それは、弾道の軌跡を見る力と、音で相手の動きを把握する力が合わさった結果だった。しかし、桐人は現状に満足することなく、更なる高みを目指していた。


彼は、自身の力の根源を探るべく、古今東西の武術書や神秘主義に関する文献を読み漁った。また、座禅や瞑想を通して精神統一を図り、感覚を研ぎ澄ませる修行を続けた。


そんなある日、桐人は侠和会の事務所で、神崎会長と今後の組織運営について話し合っていた。


「桐人、最近、近隣の組織との間で小競り合いが絶えない。このままでは、大きな抗争に発展する可能性もある」


神崎会長は、憂いを帯びた表情で言った。


「会長、お任せてくれ。俺が解決しようと」


桐人は、静かに答えた。彼は、自身の力を試す時が来たと感じていた。


その夜、桐人は、単身で敵対組織のアジトに乗り込んだ。敵の幹部と直接交渉し、小競り合いを収めるためだ。


アジトに到着すると、複数の敵対組織の構成員が、桐を取り囲んだ。彼らは、手に武器を持ち、桐人を威嚇してきた。


「桐人…よくも一人で乗り込んできたな…」


敵の幹部らしき男が、嘲笑を浮かべながら言った。


「貴様らとの無意味な争いを終わらせに来た」


桐人は、冷静に答えた。


「何を…寝言は寝て言え!」


幹部は、怒号と共に、部下たちに攻撃を命じた。複数の構成員が、一斉に桐人に襲いかかってきた。


桐は、目を閉じた。そして、深く呼吸をした。周囲の音が、鮮明に耳に飛び込んでくる。敵の足音、呼吸、服の擦れる音。そして、それらの音が織りなす、微かな変化。桐人は、その変化の中に、敵の次の動きを読み取ろうとした。


その時、桐人の意識の中に、映像が流れ込んできた。それは、数秒後の未来の映像だった。敵の一人が、右手を振り上げ、ナイフで桐を刺そうとしている。その映像は、あまりにも鮮明で、まるで実際に起こっていることのように感じられた。


桐人は、目を開けた。そして、映像で見た通り、敵が右手を振り上げた瞬間、体を左にひねった。ナイフは、桐人の体をかすめることなく、空を切った。


敵は、自分の攻撃がかわされたことに驚き、動きを止めた。桐人は、その隙を見逃さなかった。合気道の技を繰り出し、敵を地面に叩きつけた。


その後も、桐人の意識には、次々と未来の映像が流れ込んできた。敵の攻撃パターン、動きのタイミング、そして、次に取る行動。全てが、桐人の目に映し出されるように、鮮明にわかった。


桐人は、その映像を頼りに、敵の攻撃をことごとくかわしていった。敵が攻撃を仕掛ける前に、その動きを予知し、先回りして対処する。まるで、未来を操っているかのように、戦いを優位に進めていった。


敵は、桐人の予測不可能な動きに、完全に翻弄された。彼らは、何が起こっているのか理解できず、恐怖に慄いていた。


「化け物だ…!」


ある構成員は、そう叫び、逃げ出そうとした。しかし、桐人は、彼らを逃がさなかった。


桐人は、未来を予知する力と、音で相手の動きを把握する力を組み合わせ、敵を次々と制圧していった。抵抗する者は誰もおらず、アジトは瞬く間に静寂に包まれた。


敵の幹部は、恐怖に顔面を蒼白に染め、桐を見つめていた。


「お前…一体何者だ…?」


幹部は、震える声で尋ねた。


「ただの…争いを終わらせに来た者だ」


桐人は、静かに答えた。


その後、桐人は、敵の幹部と交渉を行い、小競り合いを収めることに成功した。彼の圧倒的な力を見せつけられた敵は、二度と桐人に逆らうことはなかった。


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