第二章 風鈴高校の獅子

数日前。桐人は、自身の出身中学校の近くにある近隣では有名な不良高校である風鈴高校を訪れていた。小学3年生の時から、合気道でその名を轟かせ、不良たちをまとめ上げた場所。今では、卒業生たちを桐人組に迎え入れたり、彼らが立ち上げた会社に仕事を発注したりと、関係は続いていた。


風鈴高校の校門前には、数人の不良がたむろしていた。彼らは、桐人の顔を見るなり、慌てて頭を下げた。


「総長!」


「お前ら、またここで騒いでいるのか。近隣の住民に迷惑をかけるなと、いつも言っているだろう。それと街の見回りとゴミ拾いも忘れるなよ」


桐人の言葉に、不良たちは恐縮しきりだった。彼らは、桐人の強さだけでなく、その人柄にも敬意を払っていた。


その日の夕方。桐人は、研斗と共に、とある倉庫にいた。今夜の仕事は、敵対組織の幹部の暗殺。


「研斗、準備はいいか?」


「ああ、いつでも行ける」


二人は、再びイタリア語で打ち合わせを始めた。


「Ricorda, silenzio e precisione.(思い出せ、静かに、そして正確に)」


倉庫に侵入した二人は、見事な連携で敵の警備を突破していく。研斗が合気道で敵を制圧し、桐人が冷静にターゲットを仕留めていく。


任務を終え、倉庫を後にする二人。月明かりの下、研斗が桐人に問いかけた。


「桐人、なぜここまでやるんだ?ヤクザの世界に身を置くのは、危険すぎる、お前ならどんな選択肢でも選べるだろうに」


桐人は、遠くの夜景を見つめながら答えた。


「俺は、この街が好きだ。この街の人々を守りたい。でも表の制度や組織では限界がある、だから、裏社会からこの国を変えるしかない」


その言葉には、強い決意が込められていた。

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