月が猫を見つける話
@reru-rere
ルナと福紅のお話
「てめぇ、一年のくせに何ピアスあけてんだ!」
「そうだ!生意気だ!」
理不尽なこぶしが少女の顔に向かう。
「あがっ」
勢いよく吹っ飛ばされ、痛みで体が動かない。
「ふー、すっきりした。帰ろうぜ」
「あ、まってよー!」
ヤンキーと取り巻きたちが去っていく。少女は体を引きずりながら近くの壁まで行き、体を預ける。
(歯ァ食いしばり損ねた…痛っっってぇ)
ポケットから煙草を取り出し、口にくわえる。
(しみるかなータバコ)
ライターをつけ、タバコに移そうとしたとき。
「きみ!」
「わぁ!?」
と大声で声をかけられる。あまりにもびっくりしたためくわえていた煙草とライターを落としそうになる。
「未成年が喫煙など感心できない」
金髪を後ろでまとめた少女が言う。
「が、すまない、私にもライターを貸してくれ!」
「あ…い…いいけど…」
ライターを金髪の少女に渡す。
(こんなぴっちりとしたいかにも風紀委員長のような人なのにこんな人もタバコ吸うんだな)
「ありがとう!私は如月ルナ三年だ。きみは?」
金髪の少女こと如月が隣に座りながら自己紹介をしてくる。
「猫神福紅、一年」
「福紅か、いい名前だな」
煙草の煙を吐き、にかっとした笑顔で言ってくる。
「あ、口のところケガしてるじゃないか、ちょっと待ってろ」
そういうとポケットからハンカチを取り出し、血をぬぐって絆創膏を貼る。
「あ、ありがと」
「気にするな、…ちなみになんだが、相手はどんな奴らだった?」
目にすごみが宿る。殺気、憎悪、その他負の感情だ。
「あ…え、えっと…」
先ほどのヤンキーたちの見た目を詳細に伝える。
「明日、そいつらに謝らせてやるから安心して待っていてくれな」
夜、ヤンキーどもが家に帰らず街を練り歩いていると正面に木刀を持った少女が現れる。
「なんだぁてめぇ」
リーダー格が声をかけるも返事はない。
「無視してんじゃねぇぞコラぁ!」
取り巻きが近くまで行き怒号を発する。そうすると金髪の少女はようやく相手を見据え一言。
「うちの後輩が世話になったみたいだな」
その顔には感情がなく、ただ殺意がこちらをのぞいていた。
「び、ビビるな!やっちまえ!」
その一言でルナを囲み、殴りにかかるがすべてをいなされ一撃、また一撃と受け気絶をさせられる。
「あとはお前だけだな」
その周辺には深夜にもかかわらず大きな悲鳴が上がったらしい。
翌日、福紅が登校していると校門には昨日のヤンキーたちがいた。なぜか顔はパンパンだし体中包帯やガーゼを巻いているのが見える。
「き、昨日はすまなかった」
「え…?」
また何かをされるんじゃないかと身構えていたが、まさかの謝罪。しかもちゃんと頭を下げている。
「あ…え…・」
状況が呑み込めず困惑していると彼女らは走り去ってしまう。
(何だったんだろう)
福紅が頭を悩ませていると後ろから、
「約束道理ちゃんと謝ってくれたみたいだな」
と声がかけられる。振り向けばルナが竹刀袋を持ちそこにいた。
「な、なにをしたの?」
「何も特別なことなんかしていないさ、ただちょっと教育をね」
彼女のその言葉を聞き福紅は寒さを感じる。
「ほ、ほどほどにね…?」
「わかっているさ、私だって人をたたいて喜ぶ趣味はないよ。さ、早くいかないと遅刻してしまうぞ」
「あの!」
先を行くポニーテールに声をかける。
「ん?どうかしたか?」
「ありがとう」
福紅は少し恥ずかしそうに言う。
「なんの、かわいい後輩のためだ。これくらいは安いもんだよ」
彼女はそう屈託のない笑顔で言う。
二人は新緑が広がる道を歩く。
これはまだ出会いのお話。
月が猫を見つける話 @reru-rere
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