タロットダイバー
夏沢誠
第1話 妖精のフォーチュンテリング
彼女はやった。やりとげた。
そう少女は思った。
彼女――パメラ・コーンウィル・スミス。またの名をピクシー。妖精。ピクシーは
共感覚の持ち主で、優れた画家だった。いうまでもなく、共感覚はタロットダイバーになるための大切な素質だ。
そのピクシーがあの歴史にも語られる偉大なタロットダイヴをやってのけた。一九〇九年の話だ。
ピクシーはニューヨークのプラット美術学校で日本画由来の画技を学び、現在、世界中で最も普及しているウェイト=スミス版のタロット・デッキの絵を手がけたことで有名だ。ピクシーは魔術結社「黄金の夜明け団」にノーベル賞作家のイェイツの紹介で加入し、そこで団最高位のアーサー・エドワード・ウェイトと出会い、作画を依頼された。画家としてはもちろん、タロットダイバーとしても極めて優秀だった。
一九〇九年の春のこと。ピクシーはタロット・カードの世界にダイヴして、あの伝説的なフォーチュンテリングをやってのけた。それはそれまで誰もなしえなかったものだった。あのエリファス・レヴィやエドモン・ビヨドーみたいな偉大なタロットダバーですらも。このときのピクシーのフォーチュンテリングが後の世界に大きな影響を与えたことは知る人ぞ知る歴史だ。
ピクシーのこのときのダイヴ譚を読んだことがある。このときピクシーは『棒のクイーン』や『正義』などに助けられながら『死神』や『悪魔』と戦い、『剣の8』に囚われるなど様々な困難にあいながらも、それらに勇敢に立ち向かい、そして『恋人』と恋に落ちた。ピクシーはこのときの冒険をもとにあのウェイト=スミス版の絵を描いたといわれている。
少女は思った。
ピクシーができたんだから、自分にもきっとできる。もちろん、不安がないわけではない。でも、ピクシーとならんで自分が最も敬愛する師匠に自分は才能を認められたのだ。自分にできないはずがない。
そう自分に言い聞かせ、少女は
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