第34話

僕は何も知らない様子を装って日曜の昼図書館にまた行った。


「あ。」


一番奥の席で里子ちゃんが前回同様本を読んでいた。

彼女は確かにここにいる。

初めて会ったとき触れた手は暖かかった。

僕は確かめるつもりで里子ちゃんに話しかけた。


「こんにちは」


すると里子ちゃんは笑顔になってこんにちはと返してくれた。

信じたくない。『里子ちゃんがもうこの世にいない存在』だということを…。


「あのね僕転勤になってもうこれなくなる。それで今日は伝えたい事があるんだ」


僕がそう言うと里子ちゃんの表情は段々と暗くなっていった。


「僕里子ちゃんの事が好きです。たとえもうこの世にいない存在だったとしても」


里子ちゃんは目を大きく見開いた。


「いつから知って…」


それを聞いて僕はああ本当だったんだと思った。心臓が痛い。


「平日に図書館にきて物語を六冊目まで読んだんだ。そしたらこの物語と里子ちゃんが重なってもしかしたらって。」

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