経験値を稼ぐ
.六条河原おにびんびn
第1話
気付いてしまったんです、僕は。勇者と幼馴染と旅に出た日、勇者は目を、僕は片腕を失ってしまったのです。とてもとても強い騎士団に会ってしまって。騎士団といっても、数人程度なのですが。蹴散らされたんです。いとも簡単に。赤子の手を捻るように。
僕等の攻撃なんて、相手に掠り傷も負わせられなかったのだと思います。薄皮が剥けたくらいではないでしょうか。
そうです、そうです。僕等は打ちのめされて、結局そのまま死んだのです。そこで手を貸してくださったのが、魔王子様なのです。瀕死の僕等を哀れんでくださいました。
そこで僕等は事の真相を知ったのです。僕等の前に現われたあの強い騎士たちは、僕等だったのです。それも、僕等は僕等なのですが、厳密には僕等ではないんです。あれは、未来の僕たちでした。あの道で、"強い騎士団"と出会っていなかった場合の僕等……
僕等が倒されると、マナが放出されます。それを吸収することで、僕等は食事や自己免疫ではどうにもならない力を得ます。強い騎士団たちはそれが狙いだったのですね。僕等から得られるマナなんて高が知れているのに……けれどわずかな力でマナを確実に得たいのだとしたら、僕等みたいな、まだひよっこを倒していくのが理に適っているのでしょう。あれが僕等なのだとしたら、あの村はあの人たちにとっても地元。そんな場所で、待ち伏せていたんです。自分の家に食事を摂りにいくようなものですね。あの
魔重工場で働けて、今は幸せです。もう村に帰ることはできないけれど、8時間勤務に残業代もつきますし、福利厚生も充実していて、7日間に3日休めるんです。上司も優しいですよ。たまに実家が恋しくはなりますけれど、魔王子もよくしてくださいますし。この前、手当てがついたんです。今度、結婚するんです。魔族と結婚だなんて昔では考えられませんでしたけれど、僕も今では魔族同然ですもんね。厳密には屍人族ですけど。
すごい人の末裔ってだけで、どうして旅に出なきゃいけないんだろう、恋愛もできなくて、育ててくれたおじさんおばさんと離れなきゃいけないんだろう、って思ったんですけど、あの日、"あの
地方
今度は僕が、魔王子の手足となって、"あの
そういえば来期の異動が決まったんです。討伐課に。僕が僕を討つってなんだか変ですね。
取材ってなんだか照れちゃいますね。初めて語ったので。
ええ、ああ、勇者なら、もう退職しましたよ。昔の僕等風にいえば、「邪剣正」っていう魔王子の護衛部隊の隊長に昇格したので。砦に派遣されて、頑張ってたみたいですよ、あそこで暴れ回る"あの騎士団"の一派を倒すの。弱きものを助けるんですって。昔から変わらないな。
おっと、すみません、通信波が。緊急みたいなので、ちょっと失礼。ええ、ええ、はい。はあ、はあ。そうなんですね。
失礼しました。ちょうど、礼の「邪剣正」サマからですよ。多分これは喋っちゃって大丈夫なやつです。ここに新人が来るみたいで。間違って、討っちゃったとか。棺ごと来るので、こっちで今から蘇生します。一応、撮っておきますか?ちゃんと取材に答えられたか自信ありませんし。
なんでも、僕の甥とか姪みたいなのが来るみたいなんです……厳密にいえば、息子とか娘ってことになるんですけど。
<2024.1.18>
経験値を稼ぐ .六条河原おにびんびn @vivid-onibi
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