19話目 コンビニで玲奈と出会った話

 夏休み課題の息抜きに、私は夜のコンビニに繰り出した。コンビニ内はクーラーが利いていて涼しくて快適だった。

「あ、桜子」

「こんばんは。玲奈」

 玲奈は青の半袖シャツでジーンズを履いていた。

 私は玲奈の横につく。

「なにしてたの?」

「暑いから涼みにー。桜子は?」

「勉強の息抜きに来た感じ」

「勉強かー。桜子はしっかりしてるねー」

「玲奈は勉強、進んでない感じ?」

「まーねー。またみんなで勉強会をしたいよ」

 玲奈は肩をやれやれとしたジェスチャーをしてみせてくれた。

「みんなでまたやりたいね」

「桜子、なんか買うの?」

 玲奈は私の顔を見つめてきた。

「そうだなー」

 店内を見渡してみる。手近なところにブドウ糖入りのゼリー飲料が置いてあった。

「これ、効くのかな」

「ブドウ糖?」

 玲奈もブドウ糖入りゼリー飲料の置いてある棚を見たようだ。

「効くらしいよね、書いてあるとおり集中力上がるとか? 将棋のプロとかも愛用してるとか……?」

「そうなんだ。それなら、せっかくだし買ってみようかな」

 私はかごを持ってきて、ブドウ糖入りゼリー飲料を七個入れた。

「まず一週間?」

 玲奈は分かってくれている。私のいつものクセだ。機能性食品は一週間お試し期間を設けるのが、いつものルーチンワークとなっている。

「効果あると良いね」

「ありそうだったら教えるね」

「任せたー」

 玲奈はニヤッと笑って見せてくれた。

「あたしもなにか買おっかな?」

 そう行って玲奈は冷蔵コーナーを覗いてみる。釣られて私も冷蔵コーナーを覗き込んだ。

「アイスか」

 ボソリと私は呟く。アイスと一言で言ってしまっているが、棒付きアイスにカップアイス、コーンアイス、氷菓と多岐にわたる。

「あたし、これにしよーっと」

 玲奈が選んだものは二人で分けて食べられる大福風の氷菓だった。

「これなら桜子と一緒に食べられるしね」

 どうやら最初から一緒に食べるつもりだったようだ。

「いいの?」

「構わないよ。あ、それともこの後、時間空いてなかったりする?」

 私はかごを持った手のままブンブンと横に振った。

「ううん、全然空いてる。ただ、貰っちゃって良いのかなって」

「良いよ。桜子だから分けるんだし」

 私はなんとなく照れくさくなって、俯いてしまった。

「わ、私もなんかアイス買う」

 もう一度冷蔵コーナーのアイスたちを覗く。私はSNSで話題になっていたチョコレート増し増しチョコミントを見つけた。カップで売っていて、最後の一個だった。人気さがうかがえる。

「それ、話題になっていたよね」

「うん。一緒に食べよう」

 私はかごにチョコレート増し増しチョコミントを入れて、ついでに家で食べる用のうすしお味のポテトチップスを入れて、レジへと向かった。

 × × ×

 コンビニを後にした私たちは、人気ひとけのない夜の公園のベンチに座ってアイスを取り出した。

 玲奈は付属のフォークを大福風の氷菓に突き刺し、私に向けてきた。

「桜子、あーん」

「先、貰っちゃって良いの?」

「別に構わないよ。どうせ減るもんじゃないんだし」

 そうしてまた、ずいと向けてくる。

「それじゃあ」

 私は玲奈に断りを入れてから一口頂いた。大福風の氷菓は表皮はもっちりとしていて、中はひんやりバニラ味で親しみやすい味だった。

「無難に美味しい」

「だよね」

 玲奈は一口食べられた大福風の氷菓に齧り付く。

「う~ん。美味しい」

 私はチョコレート増し増しチョコミントのカップの蓋を開けた。カップの中のチョコミントアイスはチョコレート増し増しの名の通り、チョコレートの茶色味が多い気がする。体感、チョコレート六、ミントアイス四と言った感じ。

 コンビニで貰った木製のスプーンをチョコミントに進めてすくってみせて、玲奈に向ける。

「玲奈、あーん」

「あたしが一口目貰って良いの?」

「良いの。減るものじゃないし」

 言葉を返して、玲奈に一口目をあげた。

「うーん、チョコたくさんあるね。ミント控えめ?」

「そうなんだ」

 私はまた一匙すくって一口頂く。ミントの爽やかな風味の後にチョコレートの甘さが伝わってくる。

「チョコいっぱいで幸せ」

「それなら良いや」

 くくっと玲奈ははにかんで見せてくれた。大福風の氷菓は食べきったらしい。

「付き合わせて悪いね」

「ううん、良いよ。好きで一緒にいるだけだから」

 玲奈のはにかんだ笑顔から、私は温かなものを感じた。チョコミントがなんだか甘く感じた気がした。

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