15話目 海に遊びに行く話 その4

 それぞれの食べ物を食べ終えてから、私たちはまた海へ繰り出そうということになった。

 みんなしてわーっと駆け出す。途中、私は海の家の前で足を止めた。

「どうしたの、桜子?」

 海の家では遊び道具のレンタルを行っていた。

「私、ちょっと戻るよ」

「オッケー、二人にはあたしから伝えておくよ」

 玲奈と別れて、私はお財布を取りに戻った。

  × × ×

「サクラコ、どうしたんデスか、そのおっきな浮き輪は」

「レンタルしてきた」

 海の浅瀬でパチャパチャ遊んでいたカリンさんと菊池さんは、私の横にあるものを見て目を広げていた。

 私の横には私と同じくらいの大きさの浮き輪があった。この浮き輪は先程の海の家でレンタルしてきたもので、ハイビスカスの花がらがあしらわれていて可愛い。

「その大きさじゃあ、こっちまで持ってくるの大変だったでしょ?」玲奈が私に問いかけてくる。

「転がしてけばそうでもないよ」

「そっか」

 玲奈はニカッと笑って見せた。私は海に大きな浮き輪を浮かべる。「よいしょっと」

 浮き輪の穴にお尻を入れてぷかりと浮かぶ。ゆらゆらとした波の感覚が伝わってきて気持ちがいい。

「あたしもお供するよ」

 隣まで泳いできた玲奈が私にそう言ってかける。

 玲奈を横目にする。玲奈は私と同じように仰向けになり、それを眺めていた。

「空、きれいだね」

 空の青さはは清々しいまでに青く、心の中まで清々しくなっていきそうだ。

「桜子。あっち、入道雲」

 玲奈に言われるがまま、目線を向けると、モコモコとした入道雲が視界に入ってきた。

「わたあめみたい」

 ポツリと呟くと玲奈がクスリと笑った。

「私、変なこと言った?」

「いや。桜子、まだお腹空いてるのかなって」

「そんなことないよ」

 先程のカレーライスを食べれるくらいにはお腹は空いているけれども。いつの間にか食いしん坊キャラがついていたみたいで、ちょっと不服だ。

 まあいいや、と思いながら、また空を見上げる。のんびりとした時間が過ぎていって、そのまま夕方までプカプカと波に揺られていった。

  × × ×

「今日も楽しかったね、桜子」

「そうだね」

 いつもの通話の時間。自分の部屋でごろんと横になりながら玲奈の声を聞いていた。

「桜子、帰ってから体重計乗ったでしょ?」

「乗ってない」

 嘘である。なんならまっすぐお風呂場に行って確認した有り様である。ちなみに、体重は高校に入学してから変わっていなかった。ほっと安堵したのはここだけの秘密である。

「どう、太ってた?」

「太ってなーい」

「嘘だー」

「ホントだもん」

 私は頬を膨らませてブーとぼやく。信じてもらえてないのかもしれない。

「今度、カリンさんたちと会うの、夏祭りだね」

「ね。それも楽しみ。桜子、浴衣着ていく?」

「うん。そのつもり。玲奈は?」

「私もそのつもりだよ」

「二人も浴衣かな?」

「どうだろうね? 何にせよ、夏祭りも楽しみだね」

「うん」

 それから夜遅くまでくだらない会話を続けながら時間を過ごしていった。

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