拾われ魔王と不老の勇者

レア・ヨメ

王都編

第1話 拾われた魔王

突然だが、一つ、この世界の話をしようと思う。


この世界には勇者と魔王がいる。

二人はどの時代でも争いをしていた。

そのうち、人間と魔族の種族間の溝はどんどん深くなっていった。

これは、そんな世界で愛と平和を唱えたある勇者と魔王のお話。    ーとある書庫の管理人


◆◇◆


「その子はこの先にいるのかい?」


男が鎧を着た兵士に問いかける。


「ハッ!情報ではこの先にいるとの模様です!」

「そう、、、一応みんな離れといてね」

「ハッ!力になれず申し訳ございません勇者殿!」

「相手は一応魔王なんだ、当たり前だよ」


勇者と呼ばれた男はそっけなく返す。

どうやら勇者は兵士達に興味がないようだ。


「この先であります!」

「分かった、じゃあみんな離れといてね」

「ハッ!聴こえたか!皆退がれ!」

「「「ハッ!」」」


隊長と思われる男が兵達に命令する。

勇者は1人で林の中を進んで行く。


◆◇◆


「君が魔王だね?」

「っ、、、だれ!?」

「そうだね、僕は一応勇者と呼ばれている男だよ」

「ゆ、、、勇者!?」

「大丈夫、そう身構えないで」

「っ、、、討伐、来た?」

「いやいや、そんなくだらない事の為に来たんじゃ無いよ」

「信じる、無理」

「だよねぇ」


勇者はどうやら戦いに来たわけじゃなく、説得に来たようだ。

だが魔王からは疑われている、まあ当たり前なのだが。

逆にこれで疑われないと思っていたら、それはただ単にヤバい奴なのだが。


「周りに人いないよな」


勇者は辺りを見渡す。

そんなに見られたくないことをするのだろうか。


「はあ〜、マジであいつらぁぁぁ!!」

「!?」

「こんな子供を殺せってなぁぁぁ!!」

「!?!?」

「ふざけんじゃねえぞぉぉぉ!!出来るかんなことぉぉぉ!!」

「!?!?!?」


勇者が急に叫び出した。

とうとう壊れたか。


「ああ、、、急にごめんね」

「こんな仕事してると愚痴の一つや二つ言いたくなるんだよ」

「しかも大声で言えないからすっごいストレス溜まるの」


なんか生々しい勇者事情を聞かされた。

そんなストレス溜まるのか。


「僕が言いたいのはね、わざわざ争う必要があるのかってこと」

「ん、ない」

「そうだよ、ないんだよ」

「ん」

「だからねぇ、僕と一緒に魔族と人の戦争を辞めさせに行かないか?」


すごい、愚痴を叫んだらなんか信頼をもぎ取ってる。

これが勇者の人心掌握術か。

まあでもあんな醜態晒したら逆に親近感湧くか。


「ん、行く」

「おっ、そうか、じゃあ行くぞ」

「お前家は?」

「ん、無い」

「ああ、そうか、、、すまん、変なこと聞いたな」

「ん、だいじょぶ」

「そうか」


こうして、勇者と魔王の生活が始まったのだった。

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