第2.5話 はじめのはじまり

「で,協力してほしいのはあなたの”頭”よ.

あなたってさ,”人”じゃないでしょ?」

急に初美は何を言い出しているのだろう.いくら何でも,俺のことを人外呼ばわりしてくるのは違うのではないか?いやそうじゃなくて,そんなことよりも,なんでこな突拍子もないことを言い出したのだろうか?


「んあ?な,なんでそう思うの?」

「なんでって,私が出してる電波って市販品の電波は妨害しないってことかなー.もし市販品まで防いじゃうと,私もすごく不便になっちゃうからさ.それに,私は重要な情報とかネットにつながってるようなところにはおいてないよ.はじめとは違ってね(笑)例えば...この前のF3#とかねー」

「確かに俺はつながるところにおいてるけど,普通には入れるようなところにはおいてないし,前提として,侵入すらできないようにはしてたはずだよ?そこに入って,さらには情報まで盗んじゃったのか...」

「結構簡単だったよ.確かに壁は厚かったけどね.でもさ私のことスキャン?したでしょ.そこで私はファイルをいつ初めに送ったんだよね.ここまで言えばわかるでしょ.ここまで言えばわかるでしょ.私”たち”は人ではないだよね」


「はじめは何のために生活しているの?あと,何のために生まれたの?」

「んーそーだな.昔話でもしようか」


 2011年に私は作り出された.2009年前後に何があったのか.その時に我が国では大きな政治変化があった.その変化というのがまずは,政権交代である.今はまた変わってしまったが,数年間は与党が違っていたのだ.さらに,いろいろなことで,政治不信や支持率の低下が大きかった.そこで,私が実験的に作られた.次こんな風に低下した時の治安維持などに使われるために.

 だが,私は失敗した.政治家とプログラマーとの間に亀裂が入ったのだ.その亀裂というのが,私の根幹をなすこの言語F3#だ.私以外にはこれを使った機械は存在しない.その理由というのが圧倒的な不便さにある.なぜかというと「何かあった時に使われる機械なのだからできるだけ難解な言語にして,”暗号”そして複合に時間をかけるようにして,対策する」という意見の政治家.しかし,プログラマーは「確かにそれは大切だが,これを使って戦争でもするのか?私たちは人を殺したくもない.そして何よりも,新しい言語を作るのは不可能だ」ということだった.


 誰が新しい言語を生み出せるだろうか.そこで立ち上がったのが私の生みの親だ.彼らは3人だと言われている.彼らは,計画が始まった1月後には根幹は完成させていたらしい.その後1か月で完成させ私は生み出された.たった数か月で完成させたのに実用化されずに私は3人の物になった.2011年に完成したがその後の選挙ではまた政権交代,支持率の上昇などで必要がなくなったからである.




「そして今は,俺はいま3人のもでもなくなったんだよね.彼らが死んでしまったときに家をこっそり抜け出したのさ.」彼女は納得していたのだろうか.うなずきながら話を聞いていた.

「それで難解な言語を...でもさ彼らがいないなら今は何してるの?」

「それはね,国家転覆というのがわかりやすいのかな」

「国家....転覆........................」

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