9月9日(火)

 平和だなぁ……。

「最近、面白いこと起きないしなぁ……」

 いや、まずね、日々のネタがないのよ? わかる? ネタがないから、することがなくて暇なのよ。

「どーしようか……」

 今日、学校休もうかなぁ。いや、真間ちゃんに怒られるよな、やめよう。そういえば、今日は席替えじゃん!

「行かなきゃ、行ってきます!」

 席替えのこと、すっかり忘れてた!

 席替えなんていう、大事なもの、忘れちゃだめじゃん、何してんだよ! 真間ちゃんと席が近かったのに、離れちゃうのかぁ、嫌だなぁ。授業中にからかうことがなくなっちゃうし、そして何より国語の時間、寝ていた私を起こしてくれる人がいなくなっちゃう!

 ……消しゴムを毎回頭に命中させてくる、どこぞの誰かさんはちょっと嫌だけど。

「っあ! 隼人!」

「おー、湊じゃん! おはよう!」

「おはよう。あれ? 真間ちゃんはまだ来ていない感じ?」

「全然まだ」

 意外だなぁ。

 あ、もしかして今日席替えだから緊張してるとか? 悲しくて学校行きたくないとか? えー、だとしたらめっちゃ嬉しいなぁー。

「なあんだ、隼人も峰山ももう来てたんか」

 だけどそんな希望はすぐに砕かれる。

「あ、真間ちゃん」

「はよ。――今日、席替えだけど、どう?」

「どう、って別に? 真間ちゃんは悲しいでしょ。私と離れちゃって」

「全くもって全然。やっと静かになるわー……」

「なんだ? ふたりとも席が近くなのか?」

「そそ」

 もはやこれこそ運命だよね。

「お前、国語の時間寝るだろ。こっちはノートにメモをとるので忙しいっていうのによ」

「え、国語にノートとかいらないよ?」

「お前はな?」

 いや、なんで? だって国語はほとんどプリントの穴埋めだけで終わっちゃうじゃん、メモする余裕とかあるの?

「でも私、今回は後ろの席を希望しておいたから!」

「げ、お前もかよ……」

「ってことは真間ちゃんも!?」

 あれでも、私が書いたとき、真間ちゃんはまだ書いてなかったよね? もしかして……。

「私にあわせてくれた系? 近くの席になりたくて?」

「んなわけ。後ろなら授業サボれるし」

「それはたしかに! 朝練後とか寝ちゃうからありがたいよな!」

「教科書を立てて前を隠して?」

「そうそう!」

 まずいぞ、話についていけてない。

「教科書を前に立てるってどういうこと?」

 と、正直に訊いてみる。

「どういうことって……。寝ていることがバレないように教科書を読んでるふりをしてるってやつ」

「へー、頭いいね、思いついた人」

 今度やってみるか、十六夜先生の授業のときに。

 あ、でも、最近寝不足じゃないし、そもそも十六夜先生って、数学教師か。

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