9月8日(月)

 目を覚まして、体を起こして準備して。食パンを食べて、スクバを肩にかけてドアノブを掴む。

 何年も続けていたその動作を終えて、

「行ってきます!」

 と家を出る。

 角で出会った二人に「おはよう!」「はよ」「おっはー!」と元気に挨拶をして歩き出す。

「いよいよ、今日は集計結果発表の日だね!」

 そう、今日はなんと『隼人と斎藤、どっちがイケメンか対決』の結果発表の日なのだ! めっちゃわくわくする!

「俺、勝つ自信ある!」

「私も隼人が勝つと思う。斎藤のナルシを知ってる人、結構いたし」

「わあお、さっすが真間ちゃん。情報収集がはやい」

 そしてそれを覚えてるのもすごい。だって今日は月曜日だよ?

 と、隼人に充分自信をつけていると、学校に着く。

「あー、隼人ぉ!」

「十六夜先生! おはよっす!」

 なんと今日も十六夜先生が出迎えてくれて(待ち伏せして)いる。

「せんせー、おはよー!」

「峰山」

「はよー」

「真間、お前らに用はない」

「え、聞いた? 真間ちゃん。もう教室行ってもいいみたいだよ」

「違うッ、そういう意味じゃない!」

「ん?」

 十六夜先生の言ってる意味はよくわかる。けど、こんな状況、楽しまない方がなんか損な気がしない?

「お前……、わかっててとぼけてるよな……?」

「……私、馬鹿だからわかんなぁい!」

「ふっ」

 おい笑うな、真間ちゃん。これけっこうイタいんだぞ。黒歴史確定の技なんだぞ。私の捨て身のギャグなんだぞ。

「馬鹿でもわかるような言葉だろうがッ!」

「……んふっ?」

 なんか十六夜先生、キャラ変わったね? なんでだろう、日々の疲労が手に取るようにわかるな。よし。

「十六夜先生、疲れてますよね? 癒やしてあげますよ、まずは肩もみですか?」

「要らねえよ」

「本当に口悪くなりましたね? どうしてですか?」

「問題児三人組の面倒を見るのは俺なんだよ! テストの課題設定とかしなきゃいけないのに……! というか、そもそも俺は隼人に用があったんだよッ!」

 そういえばそういう話だったな。

「はいッ! 先生、なんの話ですか!」

「『隼人と斎藤、どっちがイケメンか対決』の結果の話だ」

 あ、あれ、先生が管理していたんだ。というかよくそんな対決、校長先生が許したな、って提案したの私なんだけど。

 ま、真面目に結構気になるしね!

「結果は?」

 真間ちゃんがじれったく、そう訊く。

「それなんだが……」

『な、なんっで、俺が負けるんだよぉー!』

 突然、放送が学校の敷地内に響き渡る。これは、斎藤の声だな。

『俺は、イケメンだ! それは事実! だがなんで、隼人に負けなくてはいけないんだ、おかしいだろう!』

 あっははぁ、結果がよくわかるなぁ……。

「とりま、おめでとう、隼人」

「ああ、うん、おめでとう」

「ありがとう!」

『俺は……、俺のプライドは粉々だ! もう俺のライフはあと10しかねえよッ、どうしよう!』

「10もあるじゃねえか、もともとどんな数のデカさだったんだよ」

 ナイスだ、真間ちゃん。こんなときでもツッコミは忘れないんだね。

 いやぁ、それでも隼人が勝ってくれてよかったよ、あとで斎藤の悔しがる顔でも拝んでこ。

「くっくっくっ」

「絶対なにか企んでるな、こいつ」

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