7月

7月16日(水)

 ――『梅雨があけましたね!』

「っしゃあ!」

 リビングでガッツポーズをする。ようやく、梅雨が明けた! 例年より遅かったらしいけど!

 ほんっとうに、嬉しい! 終業式、晴れる確率が上がったぜ!

「行ってまーす!」

 今日はちゃんと、スキップをしながら歩く。めっちゃわくわくしている!

「あ、峰山。今日はスキップなんだな」

「おー、真間ちゃんじゃないかぁ! そうそう、なんと今日、梅雨が明けたんだよ!」

「そうらしいな。でも、それだけで本当になんでそんな機嫌いいの?」

「梅雨はなんか嫌じゃない? なんかこう……、嫌じゃない?」

「あー……、そうなんだ?」

 なんでそんなわかってないような顔をするんだよッ! わかりやすい説明だったじゃんッ。

「それに梅雨が終わればいよいよ『夏!』って感じになって、夏休みが始まるし、海開きだって、それに花火大会もあるしね! 最高じゃん!」

「暑いけどな」

「……それは冬が寒いのと一緒だよ?」

「そんなに夏が好きなら、沖縄にでも住んでこいよ」

「沖縄にだって四季はある」

「いや、気温がほぼ夏と同じだろ? ってことだよ。そんくらい気づけよ」

「そういうこと? え、でも、沖縄でも気温が十度ぐらいになることだってあるよ?」

「『ほぼ』って言ったんだよ。マジで気づけ――って、こんな馬鹿にそんなこと言っても無駄か」

「ねえひどくない? 私はアホであっても馬鹿じゃない」

 そこだけは否定してほしいな。

「でも沖縄は海が綺麗だよねぇ……。あ、知ってる?」

「何を?」

「沖縄ではなぜ『さようなら』を言わないのか!」

「……は?」

 わけがわからない、というような顔をする真間ちゃん。ふっふっふっ、教えてあげるよ。

「『どうせ島の中にいるからまた会えるでしょ!』っていう意味らしいよー!」

「へえ。じゃあなんて言って別れるんだよ?」

「ちょっとまって、今調べる」

「知らねえのかよ」

 そこまで訊かれるとは思ってなかったんだもん。

 グーグル検索で……、あった。

「またやーさい、だって」

「うん、なんて?」

「またねー、って意味」

「なるほど」

 知ってる?

 『なるほど』って言って相槌を打つ人のうち、ほとんどの人が内容を理解できていないんだって。

 そんなことは黙っておこう。

「またやーさい」

「いやこれから学校行くんだから、お前、今日遅刻するつもりなのか?」

「ノリ悪いな」

「黙っとけ」

 ちょっと言ってみたくなっただけだよ。ほら、知ったことはすぐ口に出すと身につくとかうんたらかんたら、っていうじゃんか。

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