第2話

 私は椅子から立ち上がったわ。思わず大声が出てしまった。


 「ヨッチン。あなた、私を誰か他の女の子と間違えてるでしょ。ここは私と先週来たお店よ!」


 そして、私は駆け出して・・お店を飛び出してしまったのよ。


 私はあてもなく歩いたの。涙がとめどなくあふれてきたわ。周りを歩く人たちがみんな私を振り返っていく・・


 気がつくと、カップヌードルミュージアム が眼の前にあった。もう閉まっている。ミュージアムの赤茶色の壁にもたれて、私はまた泣いたの。


 すると、「花音かのん!」と私を呼ぶ声が聞こえてきたの。


 ヨッチンだ。


 涙に濡れた私の眼に、ヨッチンが走って来るのが見えた。私の前に来ると、ハアハアと荒い息を吐いている。


 ヨッチンなんて大嫌い。もう顔も見たくない。


 そう思ったけど・・私の足は動かなかったのよ。


 「ごめんよ。花音かのん


 ヨッチンの声がした。その声を聞いた途端、私の中の何かが崩れてしまった。私はヨッチンの胸に顔をうずめて泣いたの。


 「ヨッチンのバカ!」


 ヨッチンがもう一度言った。


 「ごめんよ。花音かのん。ショックが大きかったね」


 ショック? 当たり前でしょ。好きな人に好きな人がいたなんて・・


 「先週の土曜日に花音かのんに渡したいものがあって・・だけど僕は渡す勇気が出なくて、どうしても渡せなかったんだ。僕は・・こんな勇気のない自分を変えたかったんだよ」


 えっ、何を言ってるの?


 私は今のヨッチンでいいのよ。


 ヨッチンに私の心の声が聞こえたみたい。


 「今までの僕ではダメなんだよ。もっと、自分に勇気を持って行動して・・花音かのんをもっと幸せにしたいんだ」


 ヨッチン、何が言いたいの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る