第10話 裏切りの代償、深まる闇

ナギが意識を取り戻したのは、病院のベッドの上だった。白い天井、消毒液の匂い。


「ここは……?」


ナギは、見慣れない天井を見上げ、ゆっくりと体を起こした。


「ナギ、あっ、先生!気がつきましたか?」


ユウタが、心配そうに声をかける。


「ユウタ……。私は……?」


「ボスの圧倒的な力の前に、完全に打ちのめされてしまったんだ。病院に運ばれて、ずっと眠っていたんだよ」


「ボス……。そうだった……」


ナギは、ボスの圧倒的な力を思い出し、絶望に打ちひしがれる。


「ごめん……。私のせいで、アヤも……」


「そんなことないよ、ナギ先生。私たちは、ナギ先生を信じてる」


ユウタが、ナギの手を握る。


「ナギさん、僕も、ナギさんを信じています」


ハルキも、ナギに微笑みかける。


仲間たちの言葉に、ナギは涙を流した。


「皆……。ありがとう……!」


ナギは、仲間たちに感謝の言葉を述べる。


「ナギ先生、私たちは、もっと強くなります。だから、一緒に心のノイズと戦いましょう!」


ユウタが、力強く宣言する。


「ええ。私も、もっと強くなる。皆と共に、心の闇を乗り越える!」


ナギは、決意を新たにする。


しかし、その時、ナギの脳裏に、幼い頃の記憶が蘇った。両親が、ヨガの力を悪用し、人々を傷つけていく光景。そして、両親を止めることができなかった、無力な自分。


(ヨガさえなければ……!ヨガさえなければ、こんなことにはならなかった……!)


ナギは、ヨガに対する憎悪が、心の奥底から湧き上がってくるのを感じた。


「違う……。ヨガは、悪いものじゃない……。私は、皆を守るために、ヨガの力を使うんだ……!」


ナギは、必死に自分に言い聞かせる。しかし、心の闇は、ナギを蝕み、ヨガへの憎悪を増幅させていく。


「ヨガなんて、大嫌いだ……!ヨガなんて、なくなってしまえばいい……!」


ナギは、心の闇に飲み込まれ、ヨガへの憎悪を爆発させた。


「ナギ先生……?」


ユウタが、心配そうに声をかける。


「ナギ……?」


ハルキも、不安そうな表情を浮かべる。


ナギは、二人を睨みつけ、叫んだ。


「お前たちも、ヨガのせいで不幸になるんだ……!ヨガなんて、やめてしまえ……!」


ナギは、そう言い残し、病院の部屋を飛び出した。


「ナギ先生……!」


ハルキは、ナギを追いかけようとするが、ユウタがそれを制した。


「今は、ナギ先生を一人にしてあげましょう」


ユウタは、そう言い、ハルキを静止した。


ナギは病院から家への帰り道の途中、ヨガへの憎悪を募らせていた。


(ヨガなんて、なくなってしまえばいい……。ヨガなんて、この世から消えてしまえばいい……!)


その時、ナギの前に、ボスの幻影が現れた。


「ナギよ。お前は、私と同じだ」


ボスの幻影は、ナギに囁きかける。


「違う……!私は、お前とは違う……!」


ナギは、ボスの幻影を拒絶する。


「フフフ……。お前は、まだ何もわかっていない……。心の闇は、お前の中に、ずっと潜んでいるんだ……」


ボスの幻影は、そう言い残し、ナギの心の闇と共鳴し、ナギを心の闇へと引きずり込んでいく。


「うわあああああああああああああ!」


ナギは、心の闇に飲み込まれ、意識を失った。


その頃、まだ病院に残っていたハルキは、ユウタの様子に違和感を覚えていた。


「ユウタ、本当にナギさんを一人にしておいていいのか?」


ハルキが尋ねる。


「ああ、今はそっとしておいた方がいいだろう」


ユウタは、そっけなく答える。


ハルキは、ユウタの態度に不信感を抱き、問い詰めた。


「ユウタ、お前……。一体何者なんだ?」


ハルキの言葉に、ユウタは冷たい笑みを浮かべた。


「やっと気づいたか。僕は、ボスのスパイだ」


ユウタは、そう言い放ち、姿を変えた。それは、ボスのスパイとして、ナギたちに近づくために作られた偽りの姿だった。


「お前が……!アヤさんを……!」


ハルキは、怒りに震え、ユウタに襲い掛かろうとする。


「無駄だ。お前に僕を止めることはできない」


ユウタは、ハルキをいとも簡単に打ちのめし、病院を後にした。


ハルキは、倒れながらも、ナギに伝えなければならないと、必死に立ち上がろうとする。


(ナギさん……。ユウタが……!ユウタが、ボスのスパイだ……!)


しかし、ハルキの意識は、そこで途絶えた。

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