第2話 謎のメール

いつものように朝日を浴びて起きる。

朝食を摂り、軽く家事をこなして大学へ行く。

人混みの中に紛れて電車に乗り、キャンパスを目指す。

高校を卒業して、上京した俺は友達と呼べる存在もいなく、ただ一人で学生ライフを謳歌する。

授業が終わって家に帰っても一人暮らしの俺は、ただいまという相手もおらずに一言も言葉を話すことなく一日を終える。

そんな代り映えのしない一日を今日も明日も明後日も、これからも送り続ける。

だがその日の休日は、普段と少し違った。

俺のパソコンに謎のメールが送られてきた。


『あなたの願いを教えてください。以下のURLからお答えください』


……新手の詐欺か?

しかもたった二言で済ませられている。

こんな怪しいメールなんて、引っかかる人のほうが少ないだろう。

無視だ無視。

そう思って、SNSを開くとそこには謎のメールが送られてきたというニュースで埋まっていた。

どうやら送られてきたのは俺一人じゃないらしい。

誰か一人くらいは当たれという数打てば当たる戦法か、ニュースに取り上げられるほどに社会現象を起こすことを目的とした愉快犯のどちらかだろう。

嘆かわしい、そんなことする暇があったら仕事をすればいいのに。

などと考えてネットサーフィンをしていると、政府が緊急放送を行っているという話題を見つけた。

どうやら放送内容は先程のメールについてらしい。

一応、自分事ではあるので見ることにはするが、どうせ騙されるなという警告だろう。

しかし、その内容は俺の考えを真っ向から否定していった。


『えー、国民の皆様。先程スマートフォンやパソコンに送られてきたであろう謎のメールですが、そちらのアンケートに24時間以内に答えてください。これは


は?

何だそれ?

意味が分からないのは俺だけではなく、ネット上でも騒動が起こっていた。

突然の通告に政府に説明を求める声が多数上がっているが、政府は詳しく答えることはできない、答えてくれ、と言うばかり。

…少々話は飛躍するが、政府は今テロを受けていてこの告知をしなければ殺すと脅されている?

…くだらない妄想か。

ダメだ、情報が少ない。

国会に抗議しに行った人もいたらしいが、門前払いされたらしい。

…とりあえず落ち着こう、まだ時間はある。

他の人の反応を見てからでも遅くないだろう。

数時間後、ネットでは多くの書き込みが上がっていた。


『あなたはこの世界の原石です、今後の活躍を期待しています!』


『あなたはこの世界の救世主です、勇者として人類を導いてください!』


返ってきたのは謎の文章。

圧倒的に多かったのは前者、五人くらいしかいなかったのは後者だ。

回答してみても、何かトラブルが起きたなどという声は上がっておらず、今の所問題はないらしい。

にしても、何だその文は?

ポエムみたいな事言い出して…。

……俺もそろそろ答えないとか。

かといって回答する気も起きないが…政府が答えろと言っているんだ。

何かあったら政府に損害賠償を請求しよう。

メールを開いてURLをタップしてサイトが変更される。

一見、何らおかしなところはない普通のサイトだ。

アンケートにはデカデカと、『あなたの願いを教えてください。以下のURLからお答えください』と書かれていて、そのすぐ下に解答欄がある。

俺の願いか…。

差出人も知らない相手にこんなことを書くのはどうかと思ったが、嘘を付くのもどうかと思ったのでそのまま願いを書いた。


『決して死ぬことのない永遠の命が欲しい』


送信。

ネットの情報だと、しばらくしたら返答が返ってくるというが…。

まぁ、いい。

夕飯の準備でもしながら待つとしよう。

そう思って椅子から立とうとした瞬間、返信が返ってきた。

俺には何が書かれているのかと、パソコンを覗く。


『マーベラス!あなたはこの世界の革命家です、魔王として世界に変革を起こしてください!』


…は?

返ってきたのはネットで見たどの情報にも載っていない文章だった。

革命家?

魔王?

いったい何を言っているんだ?

脳が理解できずにショートを起こしていると、突然パソコンが光りだして…!

俺の目の前は真っ暗になった。

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