第8話

「食べよう。俺、さっきからこのローストビーフ気になってて」



すかさず瑛二くんも援護射撃?



「それ、おれもとってきた。列できてたから気になって」


「じゃあさ、まずは食べよう」



瑛二くんと青木くんが料理に口をつけた。

自分もお皿の上のストロベリームースを口に入れた。甘酸っぱい苺が美味しい。

ロイヤルホテルのランチビュッフェはデザートが美味しいと聞いていたのだけれど、噂通り。噂以上?

続いてシロップのかかったレモンケーキを口にした時、大崎くんが話しかけてきた。



「いきなりデザートから?」


「他の物食べてたらデザート入らなくなっちゃうから」


「いつも食べる量少ないもんなぁ」



「初対面」のはずが、そんなことを言うのはまずい。思わず周りを見渡したけれど、食べたり話したりに夢中で誰もこっちのことは気にも留めていないようだった。



「さっき『綺麗系』って言われて嬉しそうだった」


「褒められたら誰でも嬉しいと思うよ」


「大野サン、綺麗だね」



にっこりと微笑まれて動揺する。



「何で今そういうこと言うの?」


「なんとなく」



ラズベリソースのかかったチョコケーキを口に入れ、「あっ」と思った。スポンジにお酒が染み込ませてあったのだけれど、それが結構キツイ。

困ったな、と思っていると、大崎くんが横からそれをとって食べた。



「ホント、お酒がだめだよね」


「もしかして、この間休憩室に置かれてた部長のお土産のチョコ、『お酒がキツイです』って付箋貼ってくれてたの大崎くん?」


「そうだよ」


「チョコだけ置いてあったから、あのメモがなかったら食べるとこだった。ありがとう」


「どういたしまして」



周りがざわついているから、わたしと大崎くんの会話はきっと聞こえていない。



「ケーキの次は何食べるつもり?」


「ラザニアかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る