見覚えのある依頼者と謎の事件~依頼の内容と情報の収集-脳内パズル-~
それじゃー、依頼者から妖斗が受けた依頼について説明しよう。
前回の依頼者は、この女性ではなく別の女性だった。
だが何故この女性を見た事があったのか。
それは"付き添い"として来ていたようだ。
「なるほど…きみは前回、依頼者の付き添い人として僕に会っていたのだね!
ようやく思い出したよ。なぜ今まで忘れていたのか自分でも不思議なくらいだ。」と妖斗は額に指を当て少し横に首を振ると暫く考え込んだ。
それを見た依頼者の女性は「無理もありませんよ…、だって、あの時の私は今とは格好も違いましたし髪の長さも。」と再び悲しげに声を上げた。
しかし妖斗が大学生の頃の事件は、とっくに解決しているだろう…。
なのに何故いまになって違う問題が発生したのか。
それを解決するには、幾つかのキーワードをピックアップし、パズルのように組み立てて完成させて絵を作り、固めるようにして集めていく必要がある。
まず、"付き添い人"として話を持ち掛けて来た女性が今回は"依頼人"として現れた。
そこから推測される違いは、今回の事件の"被害者"は女性の"親族"あるいは"関わりの深い人物"ということだ。
「ちなみに、キミが依頼者として来る理由になった経緯を話してくれないか?」と悩んでいた顔を上げて女性に向き直る。
すると女性は涙ぐみ、淡々と話はじめた。
「はい…。実は私の姉が不可解な出来事に遭遇したんです。
そのとき姉は暗い夜道を1人で歩いていたそうで…。
その日いつもは感じない"視線"を"無数"に感じたらしく、恐怖に怯えながら姉は私に連絡してきたので車で迎えに行ったんですよ。
そしたら私にも感じたのです。姉を見ていた"視線"です。明らかに通行人たちから受ける"視線"ではないと…。
あと"変な声"も帰り道ずっと聴こえたんです。車の中にいたのにもかかわらず…。怖くて、怖く。」と最後は再び、涙ぐんでしまった。
「なるほど…。それは"現世の人間"ではない"何か"がキミたち姉妹を襲うかもしれなくて、凄く怖いという話ではないかね?」と自信ありげに言い放つと依頼者の女性は口が開いて驚く。
「あ!あとキミ、前回の事件で"ターゲット"にされたんじゃないのか?そうじゃなけりゃ、この世のものではない"怪異"や"あやかし"たちから"現世の人間"が狙われることなど有り得ないからだ。」と断言した。
「えっ?!そ、そうなんですか…。私たち、覚えがあるとすれば多分あの"儀式"でしょうか…。それしか有り得ません!!」と言い放った。
「ふむ。"儀式"か…。棗くん!前回の資料が確か、この部屋の棚の引き出しに入っていたはずだ。参考にするから引っ張り出してきてくれないか?頼む。」と隣に居た助手の棗に言うと彼女は静かに頷き、隣を離れ指示された場所へと資料を探す。
「さて、助手の棗くんが前回の資料を探している間に僕はキミが話してくれた内容を"キーワード"として脳内でピースに変換しておこうかな。」とニコッと笑い、彼は脳内で女性の話から重要そうな言葉や単語をピックアップしているようだ。
まずは"謎の視線"と謎の声"だ。
この2つは依頼者と依頼者の姉が感じていたもので、帰宅中ずっとだったようだ。
声に関しても同様に2人は微かだが、奇妙な声を聴いたという。
あとは"儀式"という単語だ。
これは前回の事件にも関わっている単語のようで詳しい事は資料を見ないと分からないようだ。
この3つだけのような気がするが、問題は"謎の視線"が"無数"にあったという話。
この2つに該当する"あやかし"や"怪異"は数こそ多いが絞られてくるだろう。
だが特定するにはピースが少なすぎる。
だから昔の資料を参考にする。
前回の延長戦あるいは伏線だとしたら…。
そう考えると不可解なほどに現世の人間いがいが関わっている事は明確なのだ。
とにかく、資料さえ見れば手がかりは少し掴めるであろう…。
そうこうしているうちに資料を探していた助手の棗くんが目の前に立っていた事に気づく。
「せんせい?妖斗せんせ~い?はい、資料みつかりましたよ?なにぼーっとしてるんですか?」と彼女は手に持っていた分厚い、その資料で妖斗の頭を軽く叩いて手渡した。
「いたっ!あ、資料ありがとう。これで少しは謎が解決するかもしれない。ピースの欠片が揃う気がする!」とニヤリと笑った。
ここから少しの間、妖斗の推測パート《脳内パズル》が始まります。
しばし、お付き合いください!
「まず、前回は数年前だ。
この資料によると依頼の内容は『無数の視線』と『無数の腕』が迫り来るように襲ってきた。と記されているね。
これと今回の共通点は『無数の視線』。
だが、新たに"変な声"が聴こえた。とも言っていた。
前回は僕が持つ特殊な能力で両方を発生させていた"怪異"を沈め、解決したと思っていたんだ。
だけど今になって再び、今度はキミの"親族"に"ターゲット"を変えて目の前に現れた。
それはつまり!前回と別物の"怪異"が前回の"怪異"と結託して新たに何かをしようと試みたとしたら…。ということではないだろうか。」
そこまで独り言のように喋った瞬間、彼の頭の中には共通点で導き出したキーワードがパネルになっている部分にカチッと、はめ込まれる。
「よし!!まずは1ピース埋まったな。
あとは資料を見る限りだと、襲われた場所は違くて、前回は"大学からの帰路"だったとある。
そして今回は"親族を迎えに行った際の車道および車内"だったかな。
とりあえず、この2つで共通する部分は『帰り道』だという事だ。
これで2つ目のピースが埋まったな。」と妖斗は頷きながら小さく呟く。
そして、また彼の脳内にあるパズルを飾るためのパネルに新たなピースがカチッと埋まる。
「あの…。彼は今なにを?」と妖斗の独り言を静かに聞いていた依頼者の女性が隣でニコニコしていた棗に訊いた。
「これが所長である妖斗さんの真骨頂ですよー、こうやって資料を見ながら依頼者たちから聞いた話と似たような"キーワード"をピックアップして頭の中で整理しながらパズルのピースを埋めるみたいに謎を解決していくんです!
なので、もう暫く時間がかかりますので茶菓子でも食べながら待っていましょう、きっと答えを導き出してくれるはずです!」と耳打ちで女性に言うとウィンクした。
一方、妖斗はというと、まだ資料と向き合いながら脳内でピースをはめ込み続ける。
「3つ目の"キーワード"は、調査しないと出ないか。いや、共通点ならある!襲われた被害者の性別が『女性』であること。」
再び脳内でカチッとピースが埋まる。
「妖斗せんせい?もうそう休憩しましょ?あと、依頼者の女性が現時点での意見を聞きたいと仰っています。進捗の報告を要求します。」と手を差し出して微笑む。
「あー、わかったよ。その前に飲み物をくれ。紅茶じゃなく、水でいい。」と言うと、いつの間にか飲み干して空になった紅茶のマグカップを下げさせる。
「了解しました。いま入れてきますね。」と手渡されたからのマグカップを受け取り、棗は奥のキッチンへと消えていった。
「さてと、だいぶ待たせてしまって申し訳ない。推測の進捗だったね。ここまでの意見を話そう。
そうだね、まずは幾つか引っかかる"キーワード"がある。『無数の視線』と『帰り道』と『女性』の3つだ。
僕の知る"怪異"や"あやかし"の類にも、この3つに当てはまる奴が居る。
今のところ両方に候補があって原因を突き止められないんだ。
あと2つほどピースが埋まれば、もしかしたら、分かるかもしれない!
だが、前回の資料と今回の事件の話を照らし合わせても導き出せるピースは3つのみのようで残りは現場に行かねば分からないかもしれないと思ってしまってね。」と少し俯くと頭を抱えてしまった。
「なるほど…。でしたら、被害を受けた姉に直接てきに話をきいてみるのはいかがでしょうか?そしたら、何か分かるかも。」と悩んでいた妖斗に持ち掛ける。
すると、ちょうどキッチンからガラスのコップに水を入れて持ってきた棗が帰ってくる。
「あれ?なんの話ですか?もしかして調査しに行くって感じで?」と会話を聞いていないはずなのに鋭い事を言う。
「さきほど推測の進捗を話したんだが、残りのピースが埋まらなくてな。
どうにも資料と会話だけでは導き出しにくいらしく。
それを呟いていたら依頼者が姉に直接、会ってみたらどうか?と提案してくれたところだったんだ。
どうだ?棗くん、きみの意見を聞きたい。」と手渡された水の入ったコップを受け取りながら言う。
「そうですね…。いいと思います!
直接、被害者に会って話を聞いてみれば何か分かるかもしれませんしね。私は賛成ですよ。
あ!あと、時間的に情報屋さんが来る時間ですけど、待ってもらいますか?
それとも一緒に聞いてもらいますか?」と意見を言った後にスケジュール帳を開いて予定を確認する。
「あれ?そうだっけ…?!きょう彼くる日だったか。うん…、ちょうどいい、情報屋の彼にも話を聞いてもらおう。
その方が調査する時に楽だと思う。来たら中に入れてやってほしい。」と目を瞑り、両手を顔の前で拝む。
棗がクスッと笑いながら「わかりましたよ、そのように伝えておきますね」と言い、2人に背を向けてスマホを取り出し、カチカチっと誰かにメッセージを送る。
そして振り返り「あ!情報屋さん、もうすぐ着くそうですよー、わかりましたー。って返って来ました。
ほかにも調べといて欲しい事あれば今のうちにリストアップしておきましょう。
今回の事件の調査をしに行くための!」と話し終えるとピンポーンとインターホンが鳴る。
「はーい!いま出ます。あ、たぶんですけど情報屋さん着いたんだと思います。
迎えに行ってきますねー、お二人とも待っててください。」と棗は少し早歩きで玄関に向かって行ってしまった。
「あの、情報屋さん??って外部の協力者のひとですか?」と依頼者の女性が妖斗に尋ねる。
「そうです。彼は僕の友人で、いつも事件の解決を手伝ってくれているんですよ。
僕らと同じく"特殊な能力"を持っている仲間なんです。
良かったら、挨拶して事件の話もしてやってくれませんか?」
そう言うと依頼者は頷く。
一方、玄関で来客を迎えていた棗が彼を連れて戻ってきた。
「おう!ようやく来たな、相棒。」と少し見上げるように妖斗が彼にニカッと微笑む。
微笑まれた彼は妖斗を見るなり、目を輝かせて「妖斗さん!お久しぶりです!!自分も会いたかったですっ!!」と妖斗の両手を取り、包むようにして手を握る。
「相変わらず、おまえは僕が好きだね〜、というか背また伸びたんじゃないか?170cmの僕ですら見上げるってのに。」と少し嫌味ったらしな事を言う。
すると涙ぐみながら手を離し「あ!はい、そうなんですよね〜、自分また背が少し伸びまして…。」と言うと「やっぱりな。」と笑う。
そして彼は微笑み返すと、会話が終わり、懐に入れていた分厚い冊子と何やらタブレットのような端末を取り出し、話し始めた。
「おっと、こちらが頼まれていた資料です。
あと情報も届けにまいりましたよー。
何から聞きたいですか?」と妖斗と棗に言う。
「そうですね…。私は今回の依頼者と前回の依頼者、ふたりの親族について詳しく知りたいです。調査する上で必要になると思うので。」と棗が情報屋に言う。
すると彼は分厚い資料から何枚か棗へと紙の束を手渡す。
そこには前回の依頼者と今回の依頼者の名前と身辺情報や、個人情報など、びっしりと書かれていた。
「妖斗さんは?何が知りたいですか!先に情報ほしいですか?」と子犬が困った時のような顔で訊ねると「そうだな。僕は、おまえが持ってきた情報が知りたい。何か掴んだか?教えてくれ。」とシリアスな顔で返す。
「あ!はい。こちら、昨夜いわれた通りに現場で調べてきましたけど"男性"だと条件に当てはまらず現象は一切おこりません。
ただし、"女性"だったとしても特定の条件を満たしていない限り、これもまた、現象は起こらないという情報がありました。
なんでも、ある日を境に特定の女性が襲われたという話は何度か事例があるっぽいのですが、決まって『帰り道』だったりするらしいですよ。
あと発生する条件には特定の"儀式"をする必要があったり、更には成功したか失敗したか、でも結末が変わるらしいです。」
そう話しながら手元のタブレット機器に映し出されている写真たちを順番に妖斗へ見せながら説明していく。
「なるほど…。これが今回の情報か。やはり『帰り道』がキーワードのようだね。」とニヤリと笑いかける。
一方で、情報屋に見せてもらっていた資料を読み終えた棗が妖斗に向かって「この事件って"怪異"が関わってますよね?絶対そうだと思うんですけど…。」と見ていた資料を妖斗に渡す。
「ふむ。棗くん、これは依頼者たち親族の情報かね。家族構成やら何やら情報びっしりじゃないか!さすが僕の助手だ。」とニカッと笑った。
「はい、はい。どうも。ずっとワトソンですよー。」とべぇーっと舌をだして拗ねると「さいこうの、天才探偵にはワトソン君が居る。良いじゃないか!認めたまえよ。」と再びニカッと笑う。
かくして、1人の天才てき異能力者の探偵とワトソンの助手くん、そして1人の情報屋さんの優男。
3人は依頼者の提案で被害者の女性に会いにいく事となった。
新たに手に入れた情報と資料を駆使して残りのピースも見つけよう。
調査file.綴るとき、ついに真相にたどり着く。
危険と隣り合わせの調査が始まる。
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