とても繊細で胸に染みる青春小説でした。登場人物たちのやりとりは自然で、特に主人公・和樹の心の揺れや葛藤が丁寧に描かれていて、「好きって言えない、けど目を離せない」というもどかしい想いが切実に伝わってきました。モノクロ写真に込めた和樹の「本音を隠す」スタンスと、唯一カラーのような存在である悠香のスナップ――その対比がとても象徴的で、静かに胸を打ちます。最後の一文、「写真撮ってもいい?」に込められた勇気と想いが、まるで小さな告白のようで、この物語の余韻を深く印象づけてくれました。静かで淡いけれど、確かな感情のうねりを感じられる素敵な短編でした。
臆病で、敏感で、傷つきやすい、若芽のような恋心。灰色の殻をやぶって伸びはじめたそのもどかしさ……あざやかな夕陽が照らすこの掌編そのものが、一枚の美麗なショット。あなたの目におさめてみてください。
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