第11話 アレスレイ・コーライ視点
俺が座った状態で抱きかかえている、不思議な少女・・・。
あどけない姿で寝息を立てている姿は、この国の10〜14歳の少女に比べると体は小さいが可愛らしいくも美しい、他の女の子となんら変わらないように見える・・・いや、客観的にみても特殊な美しさなのかもしれない。
夜闇のようなダークブルーの長くまっすぐな髪を持ち、二重の大きな瞳は、光によってダークブルーに炎のようなオレンジが現れる美しくも不思議な色をはなつ光の子の魂を持つ可愛らしく美しい少女サクラ。見た目は10歳・・大きくみても14歳くらいにしかみえない・・だが、神盤はこの国の成人である16歳を表記し、そこにいた全員が唖然とした・・・。(その場にいた隊長たちは嬉しそうだったが・・・・)
しかし、それ以上に驚くことが待っていた。それは、本人が「私、もうすぐ30歳になるけど?」などと、真面目な顔で言い出したからだ。
そこにいた全員がなんて馬鹿な冗談を言うのかと言った様子で固まった。
確かに、サクラは出会ってから今まで俺やビーを含めた大人に甘えるような様子は全くなく、子供っぽく騒ぐ事もない・・・成人した大人のような少女というのが正しいのかもしれない・・・・だが・・いや待て・・・違う、そうじゃない・・・・。
俺は、少しの間に色々な事がありすぎて混乱していると半ば無理やり判断し(俺が混乱していただけかもしれないが)、『本人が30歳になる』と言った言葉と神盤の示した年齢をほぼなかったように丸め込んで、無理やり感はあったが14歳ということにした。(14歳にしておけば保護者として一緒にいられる・・この少女をどうしても守りたい・・理由は分からない・・ただそう強く思ったからだ)
その場にいた誰も俺を止めなかったから、皆同じような意見だろう・・・と思うことにした。
この少女に出会ったことで、俺は自身の中にある独占欲を自覚した。
だが、断じて男女に関する独占欲ではない。
なぜなら、俺には長年の思いが叶ってやっと妻となったビーがいるからだ。彼女は紺碧の瞳と白金色の髪をした美しい女性で、その上、騎士の中でも特殊な薔薇騎士隊隊長だ。知的で美しく強いそして優しい妻なのだ。
そんな妻が過去を後悔し、わずかな希望と知りながらも待ち続けていた『魔術師が告げた光の子』が本当に存在するなど・・・そして、自分たちの娘になるなど・・・・なによりも俺たちの娘はむちゃくちゃ可愛らしい!!・・・ビーもサクラも俺の自慢の家族だ!!
ただ、俺は嬉しすぎて少しばかり?(盛大に?) 暴走しすぎた。ビーによると(俺自身は、全く思っていないが・・・) 抱きしめたり、頭や頬にチュッとキスしたりするのは過剰な行為だというのだ・・・・ (一日中しているわけでもないのに・・・父親の可愛らしい愛情表現がわかっていない・・・)
そのせいで、俺はサクラに警戒されまくっていた。
少し前までは・・・そう、少し前までだ!!
食堂でビーが俺の膝にサクラを預けて行ってしまった時、俺は嬉しすぎてついサクラに頬擦りしてしまった(もちろん無意識だ!だんじてキスはしていない) 表情に感情が出さないようにしていたが、サクラに嫌われると思い内心ビクビクしていた。だが、サクラの反応はいつもと違った。
サクラは、俺の膝に座ったまま顔を上げて俺の目を見て言ったのだ。
「レイ、朝もだけど・・・きつい言い方してごめんなさい。でも、私、レイがお父さんになってくれてすごく嬉しいの・・・。あんな言い方ばかりだから信じてもらえないかもしれないけど・・・」
そんなサクラの言葉に俺は嬉しすぎて意識を飛ばしそうになりながらも、サクラの次の言葉を待つ・・だが、なかなか次の言葉が聞けない。
俺はつい待ちきれなくなってしまい、「サクラ、どうした?」と聞いてしまった。( もうちょっと待つべきだったか??)
サクラは「大丈夫・・・」とつぶやくと、
俺の目を再びしっかりと見つめ、
「レイ、こんな私だけど・・・レイのことお父さんって呼んでもいい??」
やや早口で問いかけてくる。
その時の俺の気持ちをどう表現したらいいのか!!(いいに決まっている!!「お父さん」と呼び続けてくれ!!) 俺の心の中は、サクラに対する好きすぎる思いが溢れすぎているのに・・感情が言葉にならない。
俺は、「当たり前だ」と言うだけで精一杯でサクラの頭を撫でることしか出来なかった。なぜなら俺は、サクラの言葉が嬉しすぎて、死にそうになっていたからだ。(「冷静で頼れる父親」らしく振る舞えているだろうか??)
だが、サクラはそんな俺を殺しにかかっていた。(いや、物騒なことではなく・・・)
サクラは俺の膝にしっかりと座り直し、俺の頬を可愛らしい小さな両手で挟み・・その上、涙目の上目遣いで・・・・「レイ、私のお父さんになってくれてありがとう。お父さん、大好き!!」顔を真っ赤にしながら叫び、俺の胸に飛び込みギュウウーとしがみついてきたのだ!!
俺は、嬉しすぎてこれが現実なのか・・・それとも俺の願望がみせた夢なのか分からなくなると同時に・・・俺の中の全ての思考が停止したのを感じた。まさにこれが嬉しすぎて死にかけるということなのか〜〜!!
いや、今死んだらまずいだろ〜〜!!・・と、よく分からないことを思っていたら、「何があった!?」ビーの声が聞こえ、ガシャッとテーブルに物が置かれる音がした。そして、俺の膝が急に軽くなった。(サクラがいなくなってしまった・・・そう感じ、やはり俺の都合の良い夢だったのか・・・がっかりする気持ちを抑える事が出来ずにいると・・・)
再び俺の膝にサクラの重みが戻ってきた (この柔らかで心地よい重みは間違いなくサクラだ!!・・若干、変態のようだと思いながら) 今の状況を把握するよう努めた。そして、俺は更なる命の危険を感じることとなったのである。
サクラが、俺の膝の上に向き合うように座り・・・俺の心臓のある方の胸に頬をスリスリしているのだ!!サクラ・・・なんて愛らしいのだ〜〜・・俺以外の男にしてはダメだぞ!!( 後でビーが言うには、心臓の音の確認をしていただけだったらしいが・・・)
それだけでは終わらず、俺の膝の上に膝立ちして、俺の両肩にしがみつき・・・俺の口元に耳を近づけてきた〜〜〜〜!!(これほどの衝撃的な事がかつてあっただろうか・・・・ない、断言できる)
俺は、即座に自身の意識を呼び覚まし「サクラ!!大好きだ!!」
と告げながら、力一杯抱きしめた!!
そして、ビーにむちゃくちゃ怒られ、サクラを奪われてしまった。(最近、ビーは俺に厳しい・・・まあ、そんな厳しい妻も大好きなのだが・・・)
なぜか、その場にいた部下にも白い目で見られることとなった。
だが、俺は大満足で幸せだ!!
サクラが俺を『父親』と認めてくれたのだから。
俺は誓いを新たにした。愛しい妻のビーと娘サクラを、生涯をかけて愛し抜く事を!!
近すぎる将来、 妻と娘が俺の愛が重すぎる事を悩みまくる日々を送ることになるのだが、それはまた別のお話。
俺は可愛らしく寝息を立てながら眠るサクラを腕にしっかり抱えて、ビーとともに食堂を出た。
大切な大好き 界扉(かいと) @sekai_tobira
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