教会

 教会って言うと、どんなイメージが浮かびますか?


 あぁ、質問はコレで二回目ですね! 身勝手にごめんなさい。

 私といえば、真っ白な時計台だったり鳴り響く鐘の音、飛び過ぎる純白のハト、抜けるように真っ青な空……なんて妄想がいくらでも湧いて出ますよ。


 え、メルヘン過ぎるって? お黙りくだだい。


 コホン。

 うちの顧問、あだ名をバツイチって言います。九州の出身なのか、怒ると『~ばってん!』と方言が飛び出すから“バツイチ”。

 因みに三十代半ばくらいですが、指輪はしていない模様です。


「――ったく、日曜の引率ったら皮肉だな。サンデーは安息日じゃないのか?」


 そんなバツイチは、今しも愛車プリウスのハンドルを切りながら小言を漏らしました。同乗する私たち三人はといえば、毎度のことなので気にも留めませんが。

 きつい天然パーマとこけた頬のバツイチは、たとえ人混みの中でも直ぐ目に付く人相です。教師にしては口汚いのが難点ですが、ユーモアもあって生徒人気は高い模様。

 実際、裏表のない言動は個人的にも好感が持てる相手でした。


「大体なぁ、神の存在はゲーテルの不完全性定理によって否定されてんだぞ」


 さて、行き着いたのは町外れにある地元のカトリック教会です。

 ただ、住宅街の中にぽつんと佇む姿は、そうと知らなければ素通りしてしまいそう。実際、普段は公民館として使われることが多いみたいです。まぁ良く言えば、地域住民の生活に上手く溶け込んでますね。


「教会のイメージ、崩れるよなぁ」


 真っ先に下車した部長サマが、大げさにため息を吐きました。

 確かに、平屋建ての屋上に後から思いついたみたく十字架が突っ立っている様は、滑稽でもありましたが。建設中に予算切れしたような風貌を、氷見先輩は『ガラオンみたい』と評しています。

 ……がらおんって何でしょうか?


「コイツの話に付いて来ようとすんな、ガチオタだからな」


 部長サマが玩具のように氷見先輩を揶揄します。それでも何やかんや、言い争いつつも仲良しなお二人です。


 そして、もう名前だけは挙がっていますが、この教会の司祭様がこれまた型破りな方なのでした。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る