第五章 研修生
25. 研修
揺れる列車に身を委ねる。
固い椅子が少し痛い。
もう何時間になるだろうか。
明るかった窓の外はすっかり暗くなってしまった。
窓から遠くに見えていた光が、徐々に大きくなっている。
あの光の場所が目的地なのかもしれない。
まだまだかかるなと、体をほぐしながら体勢を変えて目を閉じた。
大きな音を立てて列車が速度を落としていく。
ぐらっと大きく揺れた後、列車は完全に停止した。
同乗していた監督官の後について外に出ると、駅のホームでは作業員が列車から荷下ろしを行っていた。
駅のホームを後にしてからしばらく歩いて、目的の研究施設に向かう。
想像していたよりも遠くて驚いてしまった。
監督官は研究室の前まで案内してから、注意事項を簡単に伝えて去っていく。
後ろ姿が見えなくなったのを確認してから、扉をノックする。
「どうぞ。」
ゆっくりと扉を開けると、テオが僕を見てからニコッと笑う。
「久しぶりだな、ニール!無事に着いたみたいでよかったよ。」
「結構遠いんですね、驚きました。」
「列車は揺れるし、椅子も固いからあれだけ長いと辛いよな!」
「めちゃくちゃ疲れました......」
「ま、とりあえず座れよ!」
僕の疲れた様子に、テオは楽しそうに笑っている。
用意された椅子に座ってぐったりしていると飲み物を持ってきてくれた。
「研修期間は三ヵ月だよな?」
「そうです。本当はもっとほしかったんですけど......」
「しょうがない、ルールだからな。今日はもう遅いから明日の予定だけ決めるか。明日はオリエンテーションってことで、俺の研究と調査について紹介しようと思ってる。この三カ月の過ごし方について決めていこう。」
「わかりました。ちなみに、僕はどこで寝ればいいんですかね?部屋とかあるんですか?」
「お、そうだった。とりあえず、これは渡さないと。」
そう言って、テオはカードを僕に手渡した。
「これは入館証みたいなものだ。使い方とかはこの後に教えるから大丈夫。それじゃ、研修生用の宿舎に向かうか。ちょっと準備するから待っててくれ。」
その後、テオが簡単に宿舎について案内してくれた。
研究棟の近くの研究者専用の宿舎に向かいながら、テオがここでの暮らしについて教えてくれた。
詳しいことは明日の朝、一緒に回りながら施設等を紹介してくれるそうだ。
明日の朝7時に宿舎の入口に集合と約束して、自分の部屋に向かった。
カードをかざして鍵を開けてから部屋に入る。
部屋は適度に広く、必要なものはすべてそろっていた。
トイレやシャワーも部屋の中にあり、快適な暮らしができそうだ。
荷物を置いてから、用意された備品を確認する。
ベッドに横になったら起きられないなと、着替えを取り出してからシャワーを浴びに行く。
濡れたままの髪にタオルを巻いたまま、ベッドに横になる。
長い一日だった。
天井をぼーっと眺める。
兄さんもこの景色を見たんだろうか。
限られた時間を有効に使わなければならないと、改めて心に刻む。
目を閉じると猛烈な睡魔が襲ってくるのを感じた。
翌朝、テオに案内されながら、ここでの生活について教えてもらった。
想像以上に設備が整っており、ここまで快適に過ごせるとは思っていなかったので嬉しい誤算だった。
その足で、最後に採掘区に向かう。
採掘区に着いてから、その想像以上のスケールに度肝を抜かれた。
巨骸の大きさはもちろんだが、採掘場の深さと広さに圧倒されてしまった。
僕が固まっていると、テオも同じ反応だったと教えてくれた。
初めて見る人は大体、固まるらしい。
テオが研究を進めているという白脈に案内された。
僕を案内するために、今日は調査団はお休みらしい。
白脈を進みながら、テオの研究について話を聞く。
ある程度の深度まで来てから、休憩しようとテオが適当な石の上に腰かける。
「結構来たけど、体調は大丈夫か?」
「はい、今のところは。一応、訓練はしてるんで。」
「それもそうか。初めて来ると緊張からなのか体調を崩す奴も多いみたいだから、違和感あったらすぐに言えよ?」
僕がうなずくと、持ってきた水を飲んでからテオが大きく息を吐く。
「それじゃ、本題だ。」
緊張が走る。
休憩で緩んでいた気持ちが一気に引き締まる。
「消えたシャルの行方について話そう。」
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