第16話

「嘘つきね」


 私の断定にも下僕の瞳は揺らがなかった。


「私はアンタの故郷を焼いたのよ? つまり、親の仇。アンタの家族も家もすべて真っ黒焦げにしたじゃないの。覚えてるって言ったでしょう?」

「──いいえ、嘘ではございません。僕の親は、屑でしたので、むしろ感謝しているのです」

「あら、そうだったの? それは初耳だわ」


 聞かせなさい、と目線だけで促すと下僕は素直に過去を紡ぎ始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る