ビターチョコレート・シュークリームロングver.

ビターチョコレート・シュークリーム


夢:賑やかで明るい。甘いものが好き ♀︎

美希:物静か。コーヒーが好き 不問


0:---



夢:「美希はいつもコーヒー飲んでるよね?胃に穴あきそうなくらい」


美希:「ん?うん。そーゆー夢は甘いものばっかりじゃん。胃もたれしそう」


夢:「(被る)コーヒーの何がいいの?」


美希:「(被る)甘いものの何がいいの?」


夢:「……え、甘いものって口に入れた瞬間からしあわせにならない?」


美希:「私のそれがコーヒーなんだよなぁ…」


夢:「…コーヒーって黒くて苦いだけじゃん……」


美希:「子供舌の夢には分からないよ。」


夢:「うーん…ちょっとちょうだい?」


美希:「え、苦いよ?自分で煎れてきたやつだから」


夢:「ちょっとだけ」


美希:「…はい」


夢:「…ん。(1口飲む)にっがぁ!」


美希:「だから言ったのに…」


夢:「なんでこんなに苦いものを平気な顔して飲めるの!?え、美希人間じゃないんじゃないの!?」


美希:「失礼な!甘いものばっかり摂取してる夢こそ人間辞めるの?レベルだからね!?」


夢:「酷いなぁ…幸せ成分って大事じゃん?」


美希:「私の場合はコーヒーの香りから感じる幸せ成分も楽しんでるの」


夢:「えぇ〜、それならケーキとかパフェとかさぁ…目で見て感じる幸せも大事じゃん」


美希:「見る分にはいいよ…食べるならケーキ1個にコーヒーで充分。なんならビターなやつ選べば良いだけだし」


夢:「生クリームの美味しさが分からないのかぁ」


美希:「コーヒーの美味しさが分からないのかぁ…」


夢:「…って事で、今日駅前のカフェ行こ?」


美希:「どうしてそうなった」


夢:「いや、新作ケーキが食べたくて」


美希:「1人で行けばいいじゃん」


夢:「1人でケーキ食べても楽しくないよ」


美希:「…私はコーヒーしか頼まないよ?」


夢:「いいよ、一緒に行ってくれるのが嬉しいから」


美希:「…はいはい。」


0:-駅前カフェにて


夢:「んー!美味しい!」


美希:「あんたの胃袋どうなってるの?1時間食べ放題でもう10個って…」


夢:「だって期間限定の新作ケーキが食べ放題コースに入ってたら食べるでしょ!?」


美希:「いや、気持ちはわかるけどさ…」


夢:「それに、ここのケーキ甘さもしっかりしながら素材の味がしっかりしてて…ホント何個でも食べられるの!」


美希:「ふぅん…1番甘くないやつはどれ?それだけ食べる」


夢:「え、せっかく来たんだからこのシュークリーム食べてよ!」


美希:「カスタードクリームも入ってるんだよね?ちょっと苦手で」


夢:「騙されたと思って!」


美希:「…なら、うん。(1口食べる)」


夢:「…どう!?」


美希:「…うん、まぁ…悪くない」


夢:「やった!」


美希:「思ってたより甘くないんだね」


夢:「シュークリームは甘さ控えめ!お持ち帰りも出来るよ!」


美希:「…」


夢:「…美希?どしたの?」


美希:「いや、たまには悪くないなぁって」


夢:「なにが?」


美希:「甘いもの」


夢:「…にししっ」


美希:「でも、毎日のように食べてたら胃もたれ確定する。たまに食べるくらいがいいな」


夢:「えぇ〜、ここのシュークリームなら毎日でも食べたいけどなぁ」


美希:「食べ過ぎ」


夢:「ちゃんと食べた分は動いてる!」


美希:「食べた以上に動かなきゃダメじゃないの?夢、アンタ最近少し太ったよね?」


夢:「ギクっ」


美希:「…しかも、今飲んでるのバニラオレだよね?この時間だけで何キロカロリー摂取した?」


夢:「ギクギクっ」


美希:「…はぁ。」


夢:「ど、どうしよう美希ぃ!」


美希:「知らないよ。考え無しにバクバク食べてたのは夢でしょ?」


夢:「だってだって!こんなに美味しいんだよ!?食べちゃうでしょ!?」


美希:「だったとしても量が多いんだよ。もう少し考えようね?」


夢:「…うぅ……」


美希:「(軽い溜息)とりあえず、今日の分は今日の分でちゃんと身体動かして、身にならないようにしようね」


夢:「……ぐぬぬ…はい。」


美希:「……せっかくだから、もう1個シュークリーム食べようかな」


夢:「…ハマった?」


美希:「……少し」


夢:「まだ時間あるから、ゆっくり食べようね!」


美希:「はいはい……とりあえずアンタはそのバニラオレを控えようね?」


0:-食べ放題終了15分前


夢:「いやぁ!食べた食べた!」


美希:「……合計25個」


夢:「これでも少ない方!」


美希:「(顔を手で覆いながら)食べ過ぎだよ……」


夢:「大丈夫!ちゃんと帰ってご飯食べるから!」


美希:「食べるの!?」


夢:「うん!」


美希:「デザートのフードファイトさせたら優勝するんじゃないの?」


夢:「え!?あるなら行く!やってみたい!」


美希:「いやいや、冗談だから。」


夢:「ちぇ〜」


美希:「にしてもさ、徹頭徹尾生クリームで攻めたね。飽きないの?」


夢:「うん!生クリーム大好き!」


美希:「はぁ……。もうそろそろ時間か…せっかくだからケーキ食べようかな」


夢:「お!?何食べる!?新作ケーキ美味しかったよ!」


美希:「見た目が甘いから却下…」


夢:「えぇ……美味しいのに…」


美希:「……あ、チョコケーキあるんだ。ふぅん、種類豊富。ちゃんと見てなかったな……これにしよ」


夢:「……ビターチョコレートケーキ……苦そう」


美希:「そうかな?甘い物食べた後ってしょっぱいもの食べたくなるじゃん?そんな感じだよ」


夢:「でも、ビターチョコレート……」


美希:「せっかくだから食べてみようよ。」


夢:「……なら、美希のやつを1口貰う……」


美希:「ん。」


0:間


夢:「い、頂きます……」


美希:「そんなちょびっとで味がわかるかバカ。はい、ちゃんと食べる!私だってシュークリームしっかり食べておかわりしたんだから」


夢:「ん……はい」


美希:「はい。」


夢:「(意を決して食べる)」


美希:「…どう?」


夢:「……お…」


美希:「お?」


夢:「美味しいぃぃぃぃぃぃぃ!」


夢:「え!?なにこれ!初めて食べた!こんなに美味しいのに食べたこと無かったとか罪!もっと早く知っとけばよかったァ!」


美希:「…気に入ったみたいだ」


夢:「ねぇ美希!30分延長したい!」


美希:「しないよ帰るよ!」


夢:「え、え……じゃあ、テイクアウトする!すみませーん!」


美希:「はぁ……この子は全く。」


0:間


夢:「めっちゃ美味しかったね!生クリーム党の私が浮気するほどに美味しかった!」


美希:「そうかい」


夢:「次は他の味も試したいね!」


美希:「私はシュークリームとビターチョコレートケーキでいいや。」


夢:「勿体ないよぉ!色々食べよ!?ね!」


美希:「あーはいはい、わかったわかった!次行ったら違うものも食べる。食べるから揺らすな。」


夢:「絶対だよ!約束だよ!」


美希:「わかったから、お願い、揺らさないで」


夢:「約束」


美希:「約束ね。」


夢:「へへっ!」


美希:「で、ビターチョコレートケーキはどうだった?苦いの嫌って言ってたけど」


夢:「色がいかにも苦いですーって感じだったけど、食べてみたら苦さの中に甘さも感じて、添えられた甘すぎない生クリームがまたチョコの風味を引き立たせているって言うか……」


美希:「めっちゃ食レポするじゃん」


夢:「と、とにかく美味しかった!」


美希:「リピート?」


夢:「……リピート。」


美希:「私もあのシュークリームはリピートかな。煮詰まった時にコーヒーと一緒に食べたい」


夢:「煮詰まる?」


美希:「あれ?私小説家やってるんだけど…言ってなかったっけ?」


夢:「知らないよ!?初耳!」


美希:「あー、言ったつもりになってた。学校には内緒でやってるからバラさないでね?」


夢:「今のうちにサインもらっとこうかな」


美希:「そんな大したもんじゃないから、サインとか辞めて」


夢:「だって小説家だよ!?いつか大ヒットしてドラマとか映画とかさぁ!」


美希:「あー……うん、そうだね。そのうちね?」


夢:「ん?なんか隠してるな?」


美希:「隠してないよ。」


夢:「嘘だぁ!」


美希:「だ〜もうしつこい!ほら帰るよ!」


夢:「いつかちゃんと教えてね!」


美希:「……。(微笑みながら)わかったよ」


夢:「にししっ!美希!行こ!」


美希:「M/実は今度やる映画……私の小説が原作なんだよなぁ……とは、言わないでおこう。」


美希:「M/シュークリーム…美味しかったなぁ」


0:後日


夢:「美希!映画見に行こ!」


美希:「急だな…どうした?」


夢:「この前上映開始した映画!原作者が高校生なんだって!」


美希:「あー…うん、それがどうした?」


夢:「同世代が書いた小説が映画になるってすごくない!?どんな内容なのか気になる!行こ!放課後!ね!?」


美希:「私はいいや…」


夢:「なんでだよぉ!行こうよォ!」


美希:「いや!普段映画見ないし…」


夢:「たまにはいいじゃーん!」


美希:「でも…」


夢:「こないだのカフェのケーキ奢るから!ね!」


美希:「……こうなったら何言っても無駄だからなぁ…わかったよ」


夢:「やったぁ!」


美希:「あー…鑑賞チケット持ってるから、それで見よ」


夢:「え、なんで持ってるの!?」


美希:「…たまたま、貰った」


夢:「なんで言ってくれなかったのォ!?」


美希:「見ることないだろうと思って言わなかったんだよ」


夢:「学校終わったらすぐに行こ!見終わったらケーキ!」


美希:「…わかったよ」


0:間


夢:「……やっばい…超泣いた…ハンカチじゃ足りない…バスタオル欲しい……」


美希:「……」


夢:「美希?」


美希:「…ちょっと電話してくる」


夢:「……?うん」


0:少し離れた場所に移動して電話をする美希


美希:「…お疲れ様です、映画見ました。あれ、どう言う事ですか?原作の世界観を壊さないでくださいと何度も念押ししたはずですよね?……俳優さんの意向…?原作者の言葉より、起用した俳優の言葉を優先するんですか?そのせいで作中最も大事なセリフがカットされて、脈絡もない適当な言葉が加わった事で、世界観が総崩れになっているんです。どうしてくれるんですか?直接お電話で何度も監督さんに確認しましたよね?脚本の方にも…」


夢:「……み、美希?大丈夫?」


美希:「決められた尺の中に納めることが、どれだけ大変なのかは理解できます。ですが、あれはあまりにも酷いです。今後、私の作品の映像化は一切しないでください」


夢:「…美希?」


美希:「…監督さん、映像を作るのは確かにあなたです。関わっている演出家や、演者さん…たくさんの方々が居てこそ、作品は作り出されます。ですが、原作者の意思を*ないがしろにするような方々とは、今後一緒にお仕事をしたくはありません。失礼します」


夢:「…美希、どうしたの…?監督とか仕事とか言ってたけど…」


美希:「……あ、聞いてた?」


夢:「…美希、あの映画の原作者って…」


美希:「あー……うん、私」


夢:「……は、はぁぁぁあぁぁああ!?」


美希:「最初は断ったんだよ、でも、どーしてもっていうからさ、色々話し聞いて可能な限り原作の世界観は壊さないって言うからっ」


夢:「ちょっと!なんで言ってくれなかったの!?」


美希:「言ったら今みたいな反応して騒ぐでしょ!?」


夢:「え、嘘、夢?なにかのドッキリ!?」


美希:「落ち着け夢、これは現実だ」


夢:「信じらんない!ちょっと、詳しく!」


美希:「あー、わかった、分かったから、身体揺らすなってばぁ」


0:駅前のカフェにて



美希:「……って事で、映像化することになった訳…」


夢:「いやぁ、びっくりだぁ…まさか作者が目の前にいたなんて…遠い世界の事って思ってたからビックリ」


美希:「家族以外には教えてないからね…」


夢:「でも、美希があんなに怒るなんて…」


美希:「時間かけて書いた作品でデビュー作で、それがあんな安っぽい内容になるとは思ってなかったからね」


夢:「知らなかったんだね」


美希:「監督にはしつこく念押したけど、無駄だったみたい…。この言葉だけは改変もカットもしないでって言ったのに、見事に違う言葉が埋め込まれてたら、そりゃ怒るでしょ」


夢:「……私も大好きなケーキを勝手に食べられたら怒る」


美希:「それと同じ。」


夢:「……よし!今日は私が奢る!好きな物食べてよ!」


美希:「え?」


夢:「こーゆー時は好きな物食べておなかいっぱいになるのが一番!ね!食べよ!」


美希:「…なんか、夢がいると怒るのがバカバカしくなってくるなぁ…」


夢:「なにそれぇ!」


美希:「悪い意味じゃないよ、怒る暇が無くなるくらい元気な夢がいて助かったって事」


夢:「…ほんとかぁ?」


美希:「ホントだよ。」


夢:「……んー」


美希:「何頼んでもいいんでしょ?」


夢:「…いいよ!何頼む?」


美希:「ビターチョコレートケーキ」


夢:「……好きだねぇ」


美希:「夢は?」


夢:「私はねぇ…シュークリーム!」


美希:「バニラオレはダメだよ?」


夢:「いいじゃんケチー!」


美希:「あははっ」


美希:「M/その後、監督直々に謝罪の訪問があった。一方的に突っぱねることも出来たが、さすがにそれは対応として強引だと思い話は聞いた。でも、私は今後、自分の作品を映像化するつもりは無い。仮にあったとしたら、その時は完全に私が脚本に回る時だ。」


美希:「M/これを機に、脚本の勉強もしておこう」


美希:「M/夢がいて、本当に助かった…」


夢:「美希!次の作品も楽しみにしてるね!」


美希:「…出来ても教えてあげないよっ!」


夢:「意地悪ーっ!」


美希:「M/実は次回作は既に着手している…タイトルは…」


美希:「ビターチョコレート・シュークリーム」


END

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ビターチョコレート・シュークリーム 夜染 空 @_Yazome_

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