ジジイと孫
夜染 空
4人台本 ジジイと孫
ジジイと孫
ジジイ:106歳で死んだ元気なじじい
母:じじいの娘
夫:母の夫(婿)
孫:じじいの孫
0:場所は葬儀場
0:家族や友人に囲まれ静かに眠るジジイ
母:……お父さん…
夫:母さん…こんなに綺麗な顔で眠っているんだ……
母:……そうね…
孫:んー?ねぇママ、なんでじぃじ起きないの?
母:おじいちゃんはね……もう、起きれないの
孫:なんでぇ?
母:…うぅっ。
夫:…ほら、こっちにおいで…外に行こう?
孫:んー……じいじ、ここにいるのになぁ……
0:
ジジイ:いやぁ参った参った!まさか足の小指をぶつけてタンスの角に頭ぶつけて死ぬとは思わなかった!俺はまだまだ生きれたはずなのになぁ!はっはっは!
ジジイ:しかし…残念だなぁ…孫の成長を見れるのが、これで終わりとは……
ジジイ:(溜息)悲しませるなぁ…
孫:あれ?じいじだ!
ジジイ:……ん!?
孫:マーマ!じいじいる!
ジジイ:待て孫!じーちゃんのこと見えるのか?
孫:じいじ何言ってるの?じいじここにいるじゃん!
ジジイ:(感極まって)孫ぉぉ!!
0:走ってくる母
母:ちょっと!じいじが居るってどういう事!?
夫:(タバコを吸っていた夫。遅れて走ってくる)急にどうしたんだ?
母:お父さんが居るって…
夫:お義父さんが?
孫:じいじ、ここにいるよ?
母:……まさか、幽霊…?
夫:…まさかぁ…
孫:いーるーもーん!
ジジイ:まぁまぁ、孫や、じいじの事が見えるのはお前だけみたいだよ?
孫:なんで?
ジジイ:まだ分からなくても仕方ない…じいじはね、本当はもう死んでいるんだよ?お前がみているのは、じいじのオバケなんだ
孫:オバケ!?
母:嘘でしょ……あの子、本当に…?
夫:ひとりで誰かと喋ってる……あそこにお義父さんがいるのか?
ジジイ:ほら、お前がじいじとお話しているから、パパとママがビックリしているだろう?
孫:おはなし、しちゃダメなの?
ジジイ:ダメではないよ?でもほら…
孫:んー……
母:おじいちゃん、そこにいるの?
孫:うん!いるよ!
夫:なんて言ってるんだ?
孫:えっとね…じいじのお化けとお話したら、パパとママがビックリするって言ってる。
母:そりゃぁ…ね
夫:パパとママには、じいじのお化けは見えないんだよ
孫:なんで?
ジジイ:これこれ、あまり困らせるんじゃないよ。
孫:むーっ。
母:でも、良かった…お話できるなら、聞かなきゃ行けないことがあったの……
夫:そうだな…あれを聞かなきゃな……
孫:なになに?聞いてあげる!
0:母と夫は顔を見合わせる
母:…銀行口座の、暗証番号……!
夫:お義父さんが隠した、お宝の地図……!
孫:( ᐙ )?
ジジイ:……お約束来たァァァァァァァァァァァ!!!
母:ちょっと!そんなものより大事でしょ!?口座の暗証番号!
夫:待て待て待て!口座の暗証番号も大事だが、俺は婿入りした時に聞かされたお宝の方が大事だぞ!?
母:はぁ!?そんなの嘘に決まってるでしょ!?
夫:探して見なきゃ分からないだろ!?
ジジイ:やっぱりなぁ……やっぱりそうなるよなぁ!?突然ポックリ死んで、それ系何も教えてないもんなぁ!?
孫:…じいじ…なんでパパとママ、喧嘩してるの?
ジジイ:うーん…大人の問題だよ。
孫:ふーん……
母:口座凍結されたら引き出すのに物凄く手続きが面倒なのよ!?聞けるなら暗証番号聞いとかなきゃ困るでしょ!?あの人ケチで貯金が趣味だって豪語してたんだから!
夫:それは手続きすれば済むことだろ!?俺は宝の地図だぞ!?今聞かないと二度と在処(ありか)が分からない代物(しろもの)なんだぞ!?
母:子供の頃のガラクタ集めてどこかに埋めた物を「お宝」って言われても探すの!?
夫:歴史的価値が分からないのか!?
0:ギャイギャイ言い合うふたりを横目に会話する孫とジジイ
孫:……じいじ、お宝ホントにあるの?
ジジイ:ん?あぁ…あるにはあるが……お前にだけ教えるか。ナイショだぞ?
孫:うん!
ジジイ:実はな……(ゴニョゴニョ)
孫:…ふんふん……えぇ!?お家の庭にあるの!?
夫:庭!?庭だな!よぉし!
0:走って家に行く夫
母:えぇ!?まだ葬儀中!こら!待ちなさい!!!せめて葬儀が終わってからにしなさい!!
孫:パパ…行っちゃった
母:嘘でしょ?まだ葬儀中なのに……まだやること沢山あるのに…
ジジイ:困った婿殿(むこどの)だ……
孫:ねぇねぇ、ママの言ってたヤツは?
ジジイ:ん?口座の暗証番号か?それはな(ごにょごにょ)
孫:……ふんふん…え!?ママの誕生日!?
母:え!?暗証番号が私の誕生日!?
孫:あれ?ママ!?
母:こーしちゃいられない!早く確認しなきゃ!
孫:ママー!?
ジジイ:……アイツもか…。
孫:…どーしよ。
ジジイ:まぁ、そのうち帰ってくるだろ。
孫:帰ってくるかなぁ…
孫:あれ?パパが帰ってきた。
夫:……お義父さん…宝の地図なんてどこにもなかったですよ?家の庭掘っても何も出てこなかったですよ?
ジジイ:当たり前じゃい!宝の地図があるのは俺の生家(せいか)の方だ!
孫:じいじのお家は別のところにあるの?
ジジイ:そうだよ、飛行機じゃないと行けない遠い場所に埋めたんだ!
孫:今すぐには行けないね
ジジイ:全く……
孫:あれ?ママも帰ってきた
母:お父さん……暗証番号違うじゃない…!!手続きしなきゃならなくなったじゃない!!!
ジジイ:馬鹿か!大切な口座の暗証番号を誰かの誕生日にするわけないだろう!あれはスマホのロックコードだ!
孫:じいじ、嘘ついたの?
ジジイ:教えても大して金入れていないからね
孫:パパとママ、泣いてるよ?
ジジイ:泣かせとけ泣かせとけ!ジジイの葬式中に抜け出して宝だの暗証番号だの言うやつは知らん!
孫:うーん……
ジジイ:ん?どうした?
孫:いつまでじいじとおしゃべりできる?
ジジイ:…さぁ?いつまでだろうねぇ?
孫:じいじ、お宝あるなら探しに行きたい!
ジジイ:…とっても遠い場所にあるんだよ?いつ行けるかも分からないし……覚えて居られるかい?
孫:……わかんない。
ジジイ:…そうだね、お前が大人になった時、覚えていたら探しに行くといい。場所は北海道にあるじいじが生まれた家だよ。今は市が管理しているから簡単には入れないかもねぇ。
孫:暗証番号は?
ジジイ:……は?
孫:暗証番号!
ジジイ:おい待て。なんでそれも聞くんだ?
孫:お金、大事!
ジジイ:…絶対に教えてやるもんかぁ!!
0:十数年後
孫:……全くぅ、じーちゃんも人が悪いんだから。ダメだよ?大事な口座の暗証番号を結婚記念日にするなんてさぁ
孫:まぁ、それくらい大好きだったんだねぇ。お宝がばーちゃんとの写真ばっかりだ!
孫:M/葬儀の後、母は面倒な手続きを終えて口座を復活させ、実は借金を抱えていたじーちゃんの負債を一括返済…父は宝の地図のことなんかすっかり忘れていた様子。私は私でじーちゃんの生家に行き「お宝」をゲット。
孫:確かにこれは、お宝だね。
孫:仕方ない、お墓に供えに行くかぁ!
0:気分晴れやかに、孫はその足で墓参りに行くのだった
ジジイと孫 夜染 空 @_Yazome_
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