ワケアリの僕等(仮)
遙夏
はじまり。(仮)
僕は犯罪者だ。それも、思い切って大それたことが出来ないような、くだらないクズ。
僕が窃盗に手を出し始めたのは中1の頃からだった。友人とボールペンを買ったとき、間違えてボールペンを一本金を払わず持って帰ってきてしまったことがはじまり。だったはず。僕は罪悪感を感じると同時にこう考えていた。なんだよ、窃盗ってこんなもんなのかよ。その後僕は色んな物を盗んだ。万引きで逮捕された人間のニュースを見るたび、バカだなぁと思う。そんな堂々と盗むやつはみんなバカだ。まずはそっと袋および箱をとり、その場ではとらず別の物を買いに行くような仕草を見せ、人の少ないところでポケットに突っ込む。これが万引きおよび窃盗のセオリー。簡単だった。
それでも私には不満が残り続けた。いつもの事のようになれてきた手癖とは裏腹に、僕は裁かれたいと思いつづけていた。
おーい。こんな所に違法行為に手を染めた中学生がいますよー。誰も気付かない。一切発覚しない。黙認する理由がないのに、何故?家族の関係で犯罪が習慣化したわけでもなく、あまりにも金がないわけでもないのに。むしろ裁いてくれ。法に則って僕に刑を与えてくれ。僕は中2だ。立派な少年犯罪者だ。中1の時から誰にも何も言われない。早くしてくれ。僕は犯罪の悪さを知りたいだけだ。早く僕を叱りつけて、二度とこんなことをするなと脳に刻みつけてくれ。
等とまた自分のしてることを正当化しようとしてる自分がいやになる。どうして僕はこんな風なんだ。
後ろを向くと、知らない男がいた。ポケットに手をかけていた僕をしっかりと見ていた。そっとコンビニを出る。それでも何も怒らない。あーあ。おかしいでしょ。
いつものように路地裏に入り、小さなへ。そこは僕の憩いの場だ。ドアには小さな張り紙が貼ってあった。
「なにこれ。」
汚い字で、
ワケアリのヤツら、募集中。
と書いてある。
ドアを開けると、中1くらいの男の子が1人。
「お邪魔...します?」
「いいよ。」
「なぁ、ここ来たってことはさ、アンタもワケアリってことだろ?」
子供らしく、ニヤッと笑う彼。
それから僕等は話した。
「もう少しメンバー欲しいよな」
「そう?」
「もっといた方がいいだろ、多分。」
初対面のはずなのに、いつの間にかため口になっていたおたがいの口調。
一瞬静かになって、彼はそっと口を開く
「ねぇ、俺達初対面だったよな」
「そうだね」
笑い合う僕らは、ノックの音にしばらく気付かなかった。
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