【第2章】熱気

【第2章】熱気

やがて日向は高校生になり、バレエを一度やめてからも、どこか身体を伸ばす習慣が抜けずに過ごしていた。

普段は勉強の息抜きに、同年代のライバーが配信している動画を観る。メイク法や恋愛話、時事ネタなど、友人と共有して盛り上がるのが日常になっていた。


ある日、バレエ時代の旧友A子と喫茶店に行くことになる。店では、有名タレントとのコラボ企画が行われており、ライバーの等身大パネルやコラボパフェが勢揃いしていた。

ちょうどリアルタイムのライブ配信が店内スクリーンで流されており、無料配信ながらも視聴者を飽きさせない仕掛けが多い。

店内にいるファンたちはコメントを見ながら盛り上がり、あっという間に30分が過ぎてしまう。

その後は、スマホから後半が見れるようだ。店員に氷入りのグラスをもらい、あつくなったスマホを冷やしているファンがいた。


「なんだかすごいね……あっという間だった」

日向も、彼女の配信スタイルに圧倒されていた。そんなライブに挟まれる広告が目に留まる。

ASMRでムダ毛についてささやく“脱毛サロン”のCMだ。妙に生々しく、ちょっと戸惑ってしまう。


するとA子が、「実は私も別のサロンでレーザー脱毛に通ってるんだ」と笑う。もう終盤らしく、3か月に1度行くだけで済むからラクだという。

腕やひざ下をさらりと見せて、「ほら、いつでもアンオーしても平気!」とおどけるA子。その肌は驚くほどすべすべで、触れるとひんやりと冷たかった。

「よかったら紹介するよ?」

A子の言葉に、日向は少し迷いながらもうなずく。


「それにしても、あのCMは衝撃だったね」

「うん。なんかゾクッとする感じ。ASMRって不思議……」


バレエを長いことやっていた名残で、身体の硬さが気になっていた日向。どうせならと、A子の紹介でサロンに通ってみようと決める。

「まったく毛がないのは嫌かも……」と思いながらも、一度くらいなら大丈夫かも、と自分を納得させるのだった。


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