第274話
身の振り方が決まった後も話し合いは続いた。
私の中で的を得ていなかった日本を離れるという話が、否応なしに現実味を帯びていく。
兄と両親が手続きや必要な書類について話しているのを傍らで聞き、今まで自分がいかに小さなコミュニティだけで生きていたのか思い知らされた。
私って、なんにも知らないんだ。
兄が家を出た時は、もっとしっかりしていたんだろうな。
こんな面倒な妹を引き受けて、厄介な手続きまで全てサポートすると言ってくれる兄。
時間の溝を感じさせることなく両親と話す姿を見ていると、頼もしかったあの頃の記憶と重なる。
出発は兄の仕事に合わせて組まれた最短日程となった。
申請に手続、段階を踏まなければいけないことが沢山あると思っていたし。
ビザがおりるまでは日本にいると当たり前に思っていただけに、正直ちょっと狼狽えた。
兄はもう少し後ろにずらそうかと気遣ってくれたけれど、娘の身の安全を心配した両親の希望が最優先となった。
私には意見や要望なんてなかった。
会ってお別れを言いたい人は多くない。
準備で時間に追われるのが目に見えてるってだけの話だ。
時間に余裕があるからといって何かが変わることはないと思う。
別れを惜しむ時間が少し増えるだけのことで、私はその時間が重要だとは思わなかった。
自分でも不思議だけど不満は一切なかった。
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