第265話
ドアの向こう側に見た光景は、頭の中で何となく描いていたそれとは違っていた。
ドアの向こうには父が居て母が居て。
ドラマの中のように怒った父親は子供を打ち、母親はその横で泣き崩れる。
そんな光景があるかもしれないと、ある程度の覚悟はしていた。
けれど、父も母も気丈に振舞っていた。
父はいつも通り愛用しているブランドのスーツ姿で、母もハイヒールにノーカラーのジャケットを着てシャンとしていた。
刑事さんに深々と頭を下げ、何度も何度も謝罪を繰り返す。
私は何も出来ずにその様子を傍観していた。
今までなら、二人に対して誤解があったままなら。
自分のせいで親が頭を下げているのを見ても、体裁を保つ為の上辺だけの行為だと無関心でいられたのかもしれない。
だけど母の胸の内を知り、わだかまりが解けた今。
親が頭を下げるという行為は自分の存在を消し去りたいほど痛くて直視出来なかった。
私と向き合った父の目は怒りに満ちていた。
そして冷静な口調は、私に後悔と反省の重圧を与えるには十分だった。
「こんな風に娘を迎えにくるなんて想像したこともなかったよ」
返す言葉もなく視線を落とす。
こんなの序の口だと知りながらも何とも耐え難い沈黙の時間が続いた。
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