第258話

刑事たちは私のことには触れず、あと一歩先に踏み込む為の有益な情報を提供するよう求めた。

まるで「君の事はどうでもいい」と言われているようだった。




今この場所で全てを差し出すべきなのか。

それが本当に正義なのか。




ただ目の前にいる人間の顔をじっと見つめ続ける。

30分、1時間と無言のまま刻々と時が過ぎていた。



此処に来た時は朝時間を示していた洒落気のない時計は、短針が一周するのを見送り、あと3時間ほどで日付が変わる。







空腹や眠気や疲労。そんな感覚とは無縁。


ただ、とてつもなく長い1日だった。





目の前に並べられた飲み物や食べ物。

粗末とは言えないそれらを見ても有り難いとは思えない。



扱いが普通じゃないのは明白だった。


何一つ手を付ける気になれなかったのは、まともな感覚だと思う。





「タバコは?」


「……要らないです。吸わないんで」




予想外の返事を聞いた様子で驚いて見せた刑事。




こんなことを仕出かす人間がタバコを吸わないなんて有り得ないとでも思ってるんだろうか。



刑事だって所詮その程度の人間。

何かしら型にハメてしか人を見れないんだ。





期待に添えなくて申し訳ないけど、私は草も薬もやってない。


ここに来た時にもそう言ったけど、信じていない様子で流されたし。

薬物検査でもしていれば簡単に証明されるはずなのに、そうすることさえ求められなかった。




私に関する真実なんてどうでもいいんだ。

欲しいのは次のステップに繋がる情報だけ。

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