第228話
出逢った頃の渚と重なる。
相手に心を許さず、勘違いさせる隙すら与えない。
男を軽く扱ってたあの頃の姿を見てるみたいでカッと熱い感情がこみ上げる。
「……何を―――、そんなんじゃねえだろ……」
こっちがどんなに視線を拾おうと躍起になっても、逸らされた瞳が向けられることはなかった。
俺の腕を掴んだままの一世の手は制止を通り越して、拘束という言葉が合うほどに力を増していた。
異変に気づいた渡瀬さんや香澄たちは引き返してくるし、一帯を取り囲む全てが異様だった。
誰も口を開こうとせず息を呑むように立ち尽くす。
渚は無表情な男達に周りをがっちりガードされ、俺らの間には頑丈な壁が聳え立っているかのようだった。
視界が霞む朝の街。
呆然と立ち尽くす俺らの横を一台の黒塗りワゴン車が通り過ぎ、渚を含む集団の前にゆっくり停まった。
促されるままに渚はゆっくり足を進め、俺のことなんて気にも留めない。
乾いた空気が瞬きを忘れた瞳に沁みる。
訳が分からない状況に冷たい仕打ち。
気が狂いそうだった。
そこにいるのは自分の知る渚とは全く別人で、俺たちの関係は何だったのかと不安に煽られる。
さっき抱き合った感触を思い出そうとしても温度すら蘇らなくて。
この状況が受け入れられず声の出し方を忘れたように喉が震えていた。
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