第227話

ドキュメンタリー番組かと錯覚してしまうような光景だった。

男が神妙な面持ちで何かを言って、渚は閉じていた目を開いて小さく頷いた。




何が起こった?

どうして渚が?




数々の疑問は投げかけることすら許されず、一世に足を止められたまま遠巻きに眺めるしか出来ない。


男二人が左右に渚を挟み、渚の背に手を添えて先導するように歩き出す。



まるで別の作られた世界を見ているように現実味がなくて。

なのに体を引き裂かれるような恐怖感だけは生々しくリアル。




「――めろよ…… 止めてくれ……」




瞳孔を大きく開き、無意識に呟いていた。

届くことのない微かな声で壊れたように何度も何度も。




一世の隙をついてゆらゆらと数歩前に進むと、渚と男たちの視線がこっちへ向けられた。


怖いほどの無表情は、近づくなと俺を牽制しているようにさえ感じる。




「知り合いか?」


「……遊び相手です。明日になれば名前も思い出せないような相手」




刑事の問いかけに表情一つ変えずに答えた。

迷いも躊躇いもない。声を喉に痞えさせることさえなくサラリと軽い女のような台詞を平然と吐く。


刑事たちはそれ聞いて溜息を混じりの呆れ顔。



俺だけが苦しかった。

壊れたように心臓が震えていた。

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