第32話

そして不機嫌を隠そうとせずホテルに向かう前に腹ごしらえすると言って、ハワイアンバーガーショップに入った。



今日と思ったら今日行くんだって言ったくせに。

こんなとこで寄り道するのはアリなのかと訊いたら、これも思いついたことに意味があるんだって言い張る。



とてつもなく勝手な言い分にしか聞こえなかったけど面倒だから納得した風を装った。



「俺BLTバーガーとペプシ」



お前が買ってこいと顔に書いてる。

そして無言で差し出される財布。



仕方なくレジに並んで、店の奥の席に座った譲をぼんやり眺めていた。



メールを打っていたかと思えば、次に見た時には誰かと電話で話してる。

店内を行きかう人が通りすがりに譲を見る。



何をしてても目立つ男……。



周囲がざわついても動じない。

自分の存在感を自覚してるんだろうな。


そりゃそうか。

そういう仕事なのか。



二人でいる時と取り巻く世界が全く違う。


付き合いが深くなるほど、客観的に見れば見るほど、譲のことが見えなくなる気がする。



仕事のことや交友関係も正直よく分からない。


香澄には知ろうとしないのは変だって言われるけど、私は自分の目の前にいる譲だけでいいって思うから。

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