第28話

「この部屋いいよな」


「………」


「カーテンもブラインドもなしで生活出来るなんて最高じゃん?」


「その感覚全然わかんない」


「すっげー贅沢だって。裸で窓際立っても盗撮されねえし、しかもほらっ」



カーテンを遠慮なく全開にすると月光に照らされた室内は幻想的な色に包まれ、ライトなんて必要ない明るさを持っていた。



何かに吸い寄せられるように渚は立ち上がり、不意に俺の肌に触れる。



「肌に月の色、」


「お前も」



月光に愛され更に蒼く白く透けた渚の頬を指でなぞる。


視線は落としたまま。

瞬きするたびに揺れる睫を追うように見つめていた。



綺麗だった。


白さの中に色を秘める月の光が、俺達を正しい道に導いてくれるような気がした。




「ねぇ――、」



渚は言うと同時に迷ったように口を閉ざす。

一文字に結ばれた口元は想いを封じ込めるようにさえ見えた。



「言いかけてやめんなって。余計なこと考えずに言えよ」



別に何てことはなかった。

なのに妙にホッとしたような顔を見せられると、コイツ俺より不器用なんじゃないかと思ったりする。



「明日ね、仕事終わってからでもいいから時間ある?」


「ミノブと飯行く約束してるけど何かあんの?断るけど」


「ならいいの。行きたいとこがあっただけだからまた今度」



微かに首を振り、遠慮がちな手が窓越しに月に触れる。



月に照らされた横顔を見ていると、胸の奥深くが騒ぐ。

まるで何かを知らせるように。

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