夜空の照明、月華に響く独り劇

銀満ノ錦平

夜空の照明、月華に響く独り劇


 空を見上げるとそれはとてもとても綺麗な星空が輝いていた。


 都会の灯りが…苦手である。


 何か暖かさを感じない。


 ただ眩しく、ただ無機質に…しかも金を喰うのもあまり好きではない。


 それでも…今の人生には必要不可欠な存在ではあるから仕方なく使用している。


 しかしやはり眩しい…この眩しさはどうしても苦手である。


 そして悲しい時は…この眩しさが余計に目に光が染みてしまう。


 上を泣こうにも何処も眩しくて叶わない。


 好きに泣けもしない。


 そんな時は…車で少し広い草原に向かうことにしている。


 草原は無駄な光がない。


 あるのは月の灯りと星の輝きだけである。


 月の灯りでステージに立ち、星という観客が輝き出しながら俺の悲しくも清々しい独劇に歓喜に浸っている。


 私は、草原に靡く細やかな風を浴びながら自然に照らせたライトに心躍らせながらまるでダンスをするようにステップを踏んだ。


 誰もいない…本当にここは秘密の独擅場であった。


 今日は特に満月だ。


 より私を映し出す見事な照明。


 眩しすぎず、これが光に惹かれるというものだと少し微笑みながら草原を駆け抜ける。


 春風が気持ち良い。


 とても暖かく、私の肌を通り抜けるような透き通った草の香りを浴びながら…私は自然の一部と言わんばかりに石や木や草に頬を擦りながら段々と草原の奥に向かう。


 あれほど広かった草原も抜けると、先程とは対照的に草のない石ばかりの広場に出た。


 真ん中には恐らく昔、誰かが作ったのであろう古い人工物があって私はいつもそこで劇のラストスパートの仕上げを始める。


 石で出来た階段を登りながら、私は目から出る硝子の様な輝きを見せている涙を拭かずに言葉を劇を見ている星達に投げかける。


 「今日!私は…!あの愛しくて愛したくて愛でたくて…!いつも手も握りながら私に向かって微笑んでくれて…!!キスもした!身体も重ねた!一生懸命離れないように…離れないようにこの温もりで抱きしめもした!なのに…なのに!振られたんです!」


 空に響くように…星達や渡しを照らしてる月に届くように…


 「とても気持ちが重い女だって…ほんとはもっと気軽な女が良かったって…!そんなの…そんなの今言うこと何でしょうか!あれ程…あれ程!私はちゃんと!しっかりと!何度も!愛を確かめた!彼も肯定してくれた!私の目を見ながら!あの優しくて暖かくて綺麗な瞳に…!」


 私は階段を登り切るとそこにはステージの様な場所があり、その真ん中に立って私はより一層…声を高らかに挙げ、響かせた。


 「私は…!私は!…本当に好きだったんです!好きだったんですー!!!」


 叫び終えた私は、汗は出てるわ涙は出てるわでひどい顔になっていると思う。


 今になって足に疲れも出たし体中が痛み始めた。


 なんでこんな所で訳解んないことをしているんだと恥ずかしい思いもした。


 それでも…何かスッキリした。


 ここまでしなくても良かったかもしれないが今の気持ちを叫ぶにはこれしかなかった。


 私は、自業自得に疲労した身体に鞭打ちながら草原の前に停めた車の場所まで歩いた。


 歩きながらも涙は出ていた。


 スッキリしつつもやはり辛かった…。


 あんなに愛したのに結局は遊ばれただけだったんだなあと…。


 また愛せる人探さないといけないのか…。


 私はそう思いながら夜空を見上げる。


 月はいつも私を程よい光で照らしてくれる。


 月の光はずっと私を見ていてくれる。


 雲が出ていてもその向こうで私を眺めてくれている。


 眩しくもなく、光が暖かく…私は、月に惚れてしまっているのかもしれない。


 けど…それでも人肌が恋しいのは事実だったので月に私の痴態を見られながら…それでも私を見続けてくれるあの空の恋人に私は…今日も見せびらかす様に男と出会う…。











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