ポテチイーター

白川津 中々

◾️

「ラーメンありがたがって食ってる奴ってよー、結局極めるものがないうえに食通気取ろうにもレストランなんかいけねーから比較的安くて入りやすいラーメン屋通いしてる気がしてるんだがよー、どうなんだろうなー? なんか消費だけに生きてるっていうかよー、創造性足りてない感じがするぜー」


田丸君の持論に「そうかもね」と頷きポテチを食べる。彼は不良で馬鹿だけどこういう含蓄がありそうな発言を度々するから面白い。


「ラーメンなんざ塩分脂質糖質のパレード隊だぜぇ。食わねー方がいいに決まってんだよぉ。成人病まっしぐらだぁ」


「田丸君、外食もあんまりしないよね。金ないの?」


「ちげーよ。俺ぁ食にこだわってんの。この弁当も全部国産のオーガニック素材よ。仕入れから仕込み、調理まで全部気合い入れてやらせてもらってます。見てくれよこの玉子焼き。オーゴンだぜ?」


「へぇ。気使ってんだね」


「当たり前よ。男はこういうとこ大事だからよ」


ゲヘヘと笑う田丸君野の口からはさっきまで頬張っていた新鮮な野菜とオリーブオイルの香りがした。


「インスタントとかはあんまり食べないの?」


「おおよ。生まれてこの方自然食品漬けで健康そのものよ。多分120歳まで生きるんじゃーねかなー」


「お菓子は?」


「食わねぇ。食ったこともねぇ。三食しっかり腹に入れてりゃあ間食する必要がねぇからな」


「ふぅん……あ、田丸君、口開けてもらっていい?」


「あ、なんで?」


「いいから」


ポテチポイ。


「!? なんだこれ……うめぇ……」


「それがポテチだよ田丸君。君は今、初めて食の広がりを知った」


「これが、これがポテチかよ……油と塩でコーティングされただけのポテトがこんなにうめぇ……なんちゅうもんを……なんちゅうもんを食わせてくれてんだよ……」


「まだ食べる?」


「いや、いい。完全に栄養が偏ってやがるぜこいつはよぉ。腹ばかり膨れる代物だ。栄養学の観点から言わせてもらうとよぉ。食うだけ無駄だぜぇ」


「あ、そう。あ、田丸君。あいうえおって言ってみて」


「なんで?」


「いいから」


「あいうえo……」


ポテチポイ


「!? お、おぉ……うめぇ……」


僕は田丸君にポテチを与え続けた。

次はラーメンを食べさせてみよう。

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