第2話:たこ焼き屋・えっちゃんの壊れかけのベンチ。

玲夢が男?・・・どこからどう見たって女だよ・・・男のカケラもないじゃん。

だから僕は横地が言ったことが信じられなかった。

横地にからかわれてる?・・・横地はオタクだけど、そんなことするやつじゃない。


この事実は玲夢本人に確かめるのが一番いいんだろうな、でもイヤだな、聞きにく

いよな。

もし、もし玲夢が男だったとしても、だからって僕の気持ちが急に冷めるってことは

なかった。

むしろますます玲夢に興味を持った・・・それは興味本位とかじゃなくて。

ひとりの女として、天使として・・・あ、言っちゃいけなかったんだ。


な訳で僕と玲夢れむは学校の裏の路地にある「たこ焼き屋・えっちゃん」に来ていた。

で、「タコ星人たこ焼き」を2人前注文した。


「たこ星人たこ焼き」は、たこの格好をしたウインナーがたこ焼きにトッピング

されてて、ワンパック10個入りで600円。


「不死川さん・・・そこのベンチに腰掛けて食べよう」

「気をつけてね・・・そのベンチ傾いてるから・・・もし僕が結婚してて奥さんが

妊娠してたら絶対座らせないよな」


「え?私ならいいの」


「妊娠してないだろ?」


「・・・そう言う問題かな?」


「ベンチがコケそうになったら全面的に助けるから・・・抱きしめて」


「抱きしめたってふたり一緒にコケちゃったら意味ないじゃん」

「って言うかさ仲道、ベンチにカコつけて私を抱きたいんでしょ?」


「チャンスがあれば・・・」


「チャンスなんかなくたって言えばいいじゃん・・・ハグさせてって」


「じゃ〜ハグさせて」


「早いね仲道?・・・いいよ、おいで」


僕たちが抱擁し合ってる姿を、たこ焼き屋えっちゃんのたこ焼き焼いてるお姉さんに、きっちり見られた・・・ニタニタ笑ってた。

で、たこ焼き食べながら、つかぬことを玲夢に聞いてみた・・・さりげなく・・・。


「あのさ、聞くけど不死川さんって・・・男?」


「仲道・・・いきなりだね・・・君ってそう言う忙しいタイプ?」

「たこ焼き落としそうになったわ・・・」


「いや、こう言うのは単刀直入に聞いたほうがいいと思って・・・」


「まあ、そうだけど・・・もったいぶられるよりはいいかな?まどろっこしいの

嫌いだし・・・」

「で、誰から聞いたの?」


「横地だけど・・・」


「ヨコチンね・・・・おしゃべりオタク」

「・・・・で?私が男だったらなに?・・・付き合うのやめる?・・・」


「なんで?」


「今までも、そう言うことあったから、私が男だって知ったら大概の男は

引いちゃうから・・・もう慣れっこになってるの」


「だから仲道も同じ穴のムジナかと思って・・・」


「少なくとも僕はムジナじゃないのは確かだな」

「って言うかさ、横地のやつ中学の時、ヨコチンって呼ばれてたんだ?・・・なに?チンコがどっちかに向いてるから?・・・あいつ右利きだっけ・・・だったら

左だな」


「ヨコチンのチンコなんかどっち向いてようが興味ないし・・・おえ〜だよ」

「で、どうするの?たこ焼き食べたら私と別れちゃう?」


「だから同じ穴のムジナじゃないって・・・別れたりしないし・・・」

「玲夢がイヤだって言っても、くっつき虫みたいに、くっついて洗濯しても落ちないくらい、へばりついててやる」


「面白いね中道・・・でも仲道はいいんだ・・・私が男でも・・・って言うか私は

女だけどね」

「だけど私の場合はトランスジェンダーとはちょっと違うの」

「私の中には男と女が同居してるの・・・誰でも多少はそういう感覚持ってるでしょ?」

「ただ、自分が女だって意識の方が強いだけ・・・女でいるほうが楽だからね」


「僕は理解できるよ・・・玲夢が何者でも関係ないから・・・僕は好きになった

人がすべてだって言っただろ?」


不死川 玲夢はたしかにノーマルじゃないけど自己認識は従来の枠組み、ジェンダーレス、LGBTQ+、女装なんかとは全く異なってるみたいだ。


つづく。


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