第16話 私と宮浦ちゃん。
下十条ユリという人間には友達があまりいない。
小学校の頃までの無敵な私なら友達一〇〇人作る勢いだったような気がする……今はもう遠い思い出だなぁ。
クラスが変わったり・進路が違ったりというだけで疎遠になっていって、それを乗り越えるほどの熱量が私には残っていなくて。
結果的に私が親しいと”思っている”間柄の友人数人……ミドリとギンコが残って、他にも数人と今も私と付き合いを続けてくれている。
それだけでもありがたいことだと思うし、出来ればずっと続けていきたいとも思っていて……あくまで私視点ではだけだけどね。
そういえば世の中は案外狭いもので、私とかつてはよく遊んだ友達だったような・関係が自然消滅したような子が私の属している茜森高等学校二年二組にはちらほらいる。
既に別の交友関係が出来上がってるし、そこに乗り込もうとするほど私も野暮じゃないけどね。
かといって完全に絶縁とかではなく、単なるクラスメイトとして喋る程度のことはあってもそれ以上の距離を詰められることもなく・こっちから詰めようともしなかっただけの話で。
案外私ってドライなのかもしれないし、非情なのかもしれないし、実は他人への関心が薄かったのかもしれない。
きっとどこまでいっても他人事だからこそ”百合を眺める”ような傍から見ることが好きなのかもしれない……女の子同士に関しては完全に
そして恋愛関係においても経験値はゼロ、彼女いない歴=年齢というやつ!
恋愛知識に関してもドラマとか漫画とかアニメや、リアル……主に母さん二人の惚気話とかをちょっと聞きかじったりしたので妄想する程度のあさ~いものしかなったり。
付き合う・結婚という行動・イベント自体に興味がないわけではないけど、そこに私を入れるとなると「じゃあいいです……」ってなってしまう。
自分が自分の考える理想から外れること、そして私のせいで相手を不幸にしてしまうこと──ようは私には愛する人を幸せに出来る自信がない。
だから生涯独身…………で、友人や姉妹とかの幸せな家庭を眺めるのもいいかもしれないなぁ。
ぶっちゃけ”期限”のなくなったこの世界で、あと数百年も数千年も……もしかしたら数万年も先も変わらず生き続けているとなると想像しようもないんだけどね……。
案外ぼーっと百合とかを眺めてて悠々自適に過ごしてるかもしれないし、別のライフワークともいえる趣味を見つけて時間が足りなくなってるかもしれないし、本当に変え難い存在に出会って年貢を納めちゃったりするかもしれないし。
もしくは疲れて眠りに就いたりするかもしれない。
そうじゃなくても純愛神でさえどうにもならないような不可避の破滅がこの世界に訪れるのかもとか……実際のところどうなんだろうねー。
……と、人生観について何故か考えこんでしまったワケは個人的には一大イベントの続きだからだったり。
「せーんぱい?」
聞き覚えのある声、その声を聞いたのは二度目ぐらいでしかなかったとしても流石に忘れない。
私人生史上初にしてかなり衝撃的な出来事──私へ告白してきた当事者こと
振り返るとそこには小柄なツインテ―ル女子がいる。
体躯は全体的に華奢で細くて小さく凹凸は少ない、太ももの太さなんて私の何割引き……げふんげふん! 貧相と細いは違うのだよ!
少し青みがかった黒髪を青い色のリボンの付いたヘアゴムでツインテールにしてる系女子、地毛で染色している感じではなさそうなので何か異種族的な血が入っているのかもしれない?
足を覆う黒タイツにスカート丈は短めな一方で制服は少し大きめなのかだぼついているのが微笑ましい。
いわゆる声はアニメ声、発声もハッキリでビビっと来るようなソプラノヴォイス、耳元で囁かれるとドキっとしそうなので心臓に悪い可能性がある。
まじまじと観察してるようで気持ち悪いな私!
ともかく友達の規模でさえ少数精鋭化となっていた私への愛の告白、正直断る選択肢もあったのに日和って友達からにした……けども!
私にとって今更友達が増えるのでさえビッグイベントに違いなかったのだ!
「宮浦ちゃん?」
「ミヤコですよー?」
名前呼びするには私から宮浦ちゃんへの好感度が足りてない……わけではないけども、まだ警戒中? 推し測り中?
結局どうして私を好きになったのか、私の提案通りに友達から始めてくれたのかがわからないので。
「まずは苗字からで」
「ちぇー、いいですよーだ。私も下十条先輩って呼びますからね!」
「うん、それでいいよ」
未だガード固めな私に対して少し拗ねるように提案してくる宮浦ちゃん。
お姉ちゃんとややこしかったら下十条妹先輩でもよろしくてよ。
「いえ! やっぱりユリ先輩って呼びます!」
「そ、そう……?」
反骨精神にあふれた子なのかな……? 私が呼ばれる分にはどっちでもいいけど。
「絶対ミヤミヤって言わせてみせます!」
「ミヤミヤ」
「言ったから解決!? って今言ったから終わりとかじゃなくて継続性がものを言うんですよ!」
一回限定のつもりがバレたか……ニックネームで呼ぶということ自体が私にとってはハードル高いんだよね!
「宮浦ちゃんへのミヤミヤ呼びで定着したら私はユリユリ呼びになる感じ?」
「いえ、それは蒲田パイセンと被るのでナシで」
おや、そういう情報は把握してるんだ。
私の幼馴染ことミドリに関してもある程度情報を把握してるっぽい……?
「やるとしてもユリユリユリ先輩ですね」
「実は既にそう呼ぶ子がいたとしたら……?」
いないけど、そもそもミドリのユリユリ呼びもミドリがギャルっぽくなったあたりから流れでやってる感じだし。
「おかしいですね。そういう呼び方をする子はいないはずですけど……? どこの誰だったりします?」
私の負けです。
「ごめんなさい、いません」
「ですよね! 私のデータになかったので焦りました!」
この子もしかしてデータ厨というやつなのか……?
それはともかく宮浦ちゃん独自調べでそこまで情報を得ているとは……告白相手のことをちゃんと知ろうしてるあたり────勉強熱心なんだな~。
「とりあえずお昼にしちゃおっか」
「はい! ユリ先輩とランチです! もう実質これはランチデートですね!」
「いや~、新しい友達とのお昼ご飯嬉しいな~」
「私も嬉しいです!」
あくまで友達……友達なので。
そうしてお昼ご飯、いつも作ってくれているリン母さんお手製のお弁当は小さな楕円形のお弁当箱の中に色とりどりの世界観がぎゅっと詰まってる。
いつもありがとう、おいしいよ。
そして宮浦ちゃんのお弁当もちらり見ると……なかなか気合いが入ってる、具材の切り方を工夫してキャラ弁風にしているあたり作り手の熱量とセンスが伝わってくる。
「かわいいお弁当……」
「私、かわいいですか!?」
「宮浦ちゃんも間違いなくカワイイけど、今の感想はお弁当に対してだよ~」
私如きが……だけども、この学校はカワイイ子が多い中でもかなりカワイイカテゴライズに入りそうなのが宮浦ミヤコちゃんだ。
こう小動物的な愛くるしさがあって、男女問わず守ってあげたくなること請け合いな見た目とオーラを兼ね備えている!
だから、いよいよなんで私なんだろうね~?
「私……カワイイですか?」
何気なく言ったことが引っかかったのか、宮浦ちゃんの箸が止まりこちらを覗き見る。
うっ……深い意味はないんだよ、客観的に事実を述べただけであって、街頭一〇〇人に聞いたら九〇人ぐらいは超カワイイと大絶賛してくれる程度にはカワイイんだよ。
「そう思うけど……?」
「じゃあ今からでも付き合えますね!」
こう隙あらばアタックしてくる系か~。
「それはそれこれはこれで」
「むー、強敵ですね…………というかユリ先輩もカワイイ系だと思うんですけど!」
「お世辞でも嬉しいねえ」
「えっ……そう捉えます?」
なんか本格的に驚いてるようなリアクション、褒め上手接待上手だねえ。
そうしてお昼を二人食べ終わりそうなタイミングで、私はちょっと探りを入れてみることにした。
「聞いていいか迷ってたんだけどね」
「はい、なんでしょう」
「私のどこが好きだったり?」
財力……は私自体にはないし、下十条家自体はいい家庭だとは思うけどものすごいイイところの家系的な印象はなくて。
性格…………ないな!
見た目………………お姉ちゃんの爪の垢ぐらいはあるかな?
「一目惚れでした」
「……そ、そうなんだ」
見た目かぁ、まぁお姉ちゃんの残り香的なものを感じ取ってちょっとマニアックな方面の趣向を突き詰めたら可能性はあるのかな……?
じゃないな、告白タイミングを考えれば私がサキュバスの異能に目覚めてムチムチしていた頃のはずで…………?
もしかして今の私はお呼びでなかったり!?
「むちむちしてる方が好き……?」
「? そんなことはないですけど、というかどんなユリ先輩でも受け入れられる自信があります! 昨日の色気むんむんな感じもいいですけど、見慣れてる今のジメっとした感じのユリ先輩も安心します!」
どういうこと……?
一目惚れなのにどんな私でもいいと……トンチかな?
そして今の私はジメっとしてるんだ…………なんだろう、納得出来ちゃうな。
「あれは西茜小学校一年生の頃です……」
「え」
そんなに遡るの!?
「”私がクラスの女王です”みたいな自信に満ちていたユリ先輩」
「うわあああああ!?」
黒歴史! それ黒歴史だから!
もんんんんのすごく調子に乗っていた頃の私で! みんなも配下ムーブで乗ってくれるからついついイキっちゃったんだよ!!
「からの中学生あたりの落ち着いて”私は陰から活躍するのが性に合ってるんだよね”的な陰のあるユリ先輩も!」
「的確に抉ってくる!」
ピンポイントに私の痛いところ付いてくるじゃん!
落ち着いたけど実は私には秘められた力が~とか妄想してた時期、過去の私に刺されているようで痛いぞこれは!
「そして今の、空気に溶け込んで”後方から人間関係を見守るに限る”みたいな理解者風ムーブなユリ先輩も好きです!」
「実は私のこと嫌いなの!?」
今の私についても自覚はあっただけに言われたくなかった……!
そうですよ! 百合関係をを眺めて妄想で補完してる痛い百合オタクで勝手に理解者ムーブしてる変なヤツですよ!
「いえいえ、全部ひっくるめて好きなんですよ。その時その時で色んな表情が見れるのが楽しいんです」
「えぇ……」
強引にそれっぽくまとめてるだけじゃない? 実は私のことディスりたかっただけじゃない?
でも…………悪意があって言ったなら・言おうとしたのなら”ピりっと”してるはずではあるんだよね…………。
「そう、私の趣味はユリ先輩観察なんです! そして恋人関係になったら、またまた近くで友人関係になったらどうなるか……楽しみで仕方ないです!」
「そういう系か~!」
研究対象としての好意らしい、珍獣みたいな扱いなのかもしれない。
それならまぁ……普通に好き好き言われるよりも納得できるかな!!
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