鳥の子ウリン

押見五六三

全1話 奴が真夜中に現れた……

「ねえ? 『トリノコウリン』って知ってる?」


 後ろの席の、たいして親しくないクラスメイトから、いきなりこんな質問をされた。

 勿論、『鳥の子ウリン』なんて聞いた事ない私は、黙って首を振るしかないのだが、その妙にインパクトのあるタイトルには幾分興味を唆られた。


「何それ? 漫画?」

「ううん。違うの。『トリノコウリン』は、深夜アニメを見てると、出てくるの」

「深夜アニメ?」

「そう。夜中にテレビでアニメを見てると、途中で――」


 __コンッ。

 後ろの席の子の頭に、何処からか飛んできた消しゴムが当たって床に転がり落ちた。

 どうやらその消しゴムは、斜め後ろに座っている男子から投げられた物のようだ。

 その男子は、「シーッ」と口に指をあてながら後ろの子を睨んだ。

 それを見た後ろの子は、それ以上『鳥の子ウリン』の話題を口にしなかった。

 そして私もそれ以上聞かない事にした。

 けど、内心気になって仕方ない。

『鳥の子ウリン』っていったい……。


 家に帰ってパソコンで検索したが、『鳥の子ウリン』なんて言葉は引っかからない。

 仕方なく深夜アニメの時間まで待つことにした。


 時間潰しに本を読む。

 最近、やりたい事が見つからず、退屈だ。

 こうやって読書をするしか楽しみがない。

 何か面白い事ないかな……。


 やがて深夜アニメの時間に成った。

 初めて見るアニメだけど面白い。

 こんなタイトルの漫画有ったっけ?


 そしてCMに入る。

 その時、急に画面が白く成った。

 なんだろうと思ってたら、画面の上の方から鳥らしき丸い物体が降りてきた。

 まるで妖精の降臨のように……。


「鳥の……降臨?」


 後ろ子が言ってたのはこれか。

『鳥の子ウリン』じゃなくて『トリの降臨』だったんだ。


 どうやらこれは、『カクヨム』という小説サイトのCMらしい。

 無料で小説を書いたり読んだりできるようだ。

 沢山読んでもらえたらリワードが貰える。

 人気作品は書籍化が有るかも。

 このアニメも、カクヨムからデビューした人の作品だとか……。


「私も書きたーい!」


 これは退屈だった私の日常が、変わりそうだ。

 ただ、このCMを見て一つだけ言いたい事がある。

 それは……。


「このトリの妖精キャラ、可愛くない。新キャラでウリンちゃん出して」


〚完〛

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鳥の子ウリン 押見五六三 @563

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