佐倉教授の助手としてバイトしている主人公。でも、そこには『ゼミ室の妖精』津田が居ついていた。彼は不愛想なくせに、妙に主人公には優しい。そんな距離感がいじらしい青春オカルトホラー。
……というのは、トップページから誘い込むための惹句に過ぎず。
この作品の見るべきところは、作者の洗練された言霊たちだ。
言の葉を集めて組み立て文をなす。できた文を編み上げ物語とする。
そこにあるべくしてある言葉が、自然な流れで配されている。
なので、読み手はするすると読み進める。
ただ、油断するといつの間にか、現世は幽世に切り替わる。
気づいたときには、手遅れだ。
まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの澱んでいる世界が、そこに広がる。
そして読み手は、主人公の丹波君と一緒に異界に放り込まれてしまう。
主人公は常人である。だから、異界では何もできない。
そこに颯爽と現れるのが、幽世とコンタクトする技術を持った、津田君だ。
津田君は丹波君に対して、本当につれない。
つれなくて、優しい。優しいから、つれなくする。
昔、何かで読んだ記憶がある。『祓い屋・拝み屋は、自分自身が幸せになることは難しい』と。
この世ならざるものと関わり、その業や怨念を一身に引き受ける者が、この世の富や愛、平穏な暮らしを手に入れることが難しいのは、容易に想像できるだろう。
しかし、この物語では、丹波君を筆頭に、皆が津田君のことを大切に思っている。
その思いが、どうか言の葉で織られた上帛に彩られてほしいという、はかない願いとともに、本作をお勧めする。
☆登場人物の丹波君、津田君はもとより、教授陣も「カワイイ」に満ちているので、ぜひ読んで欲しい。マジで。