第10話

 夏休み初日から、壮太は部活だった。もちろん合う時間はあるのだが、お互いにやること、やりたいこともあるのでそのすべての時間を合わせる、ということは出来ない。

 初日は朝佑月が起きて休日の身支度を済ませてから、咲綾を見送って由夏の家に出向いた。休日を全力で楽しみたい佑月は、なるべく長期休暇序盤に課題を終わらせたいタイプなのだ。


「いらっしゃーい、佑月」

「おはよう、由夏ちゃん。課題やろ」

「真面目だねー。まああたしも課題とかで内申稼がないとだし、やるかな」


 善かいとは違いゲームなどは開かず、佑月たちはリビングのテーブルで課題を進める。課題も勉強とはいえさっさと終わらせたい二人は、効率よく進めようと別々の課題を進め、終わったらそれを渡して写しあう。間違いがあることに気が付けばその場で修正しあって、効率よく進める。

 そうして課題を進めていると、いつの間にか昼になっていた。


「あ、昼だ。壮太くん、部活終わったかな……」

「えー、会いに行くの?」

「ダメ?」

「せっかくだから遊ぼうよ。結構課題進んだしさ、ゲームでもしない?」

「するー。でも着かれたからお昼ご飯食べたらちょっと休憩したい。あ、お昼どうする?」

「んー、お金に余裕あるなら何か適当に出前取らない?」

「出前! ならわたしお気に入りのカフェあるんだけどそこで頼みたい。ちょっと高いけど」

「お金はあんまり気にしないでいいよー、だいぶ余裕あるし」

「じゃあ決まり!」


 佑月はスマホでパパっと注文して、二人で来るのを待つ。その間、ソファーに移って背もたれにだらりともたられかかると、由夏が隣に座り、また膝に頭を乗せろと言いたそうに膝をポンポンと叩く。


「膝枕するの好きなの?」


 そう言いつつ、由夏の膝に頭を乗せる。


「佑月ちっちゃくて可愛いからね、いい癒しになるんだよね」

「由夏ちゃん、友達との距離結構近いタイプ?」

「いやー、どうだろ。強いて言うなら佑月が妹みたいで可愛いからだけど」

「男子が言ったら下心あるやつだ」

「佑月がそれ言うの?」

「う、うるさいし。別に下心ないもん」

「ってことは、前はあったんだ?」

「あれは、由夏ちゃんが誘ってきたからじゃん……」


 あの時は雰囲気とそうなる前が前だったので乗ってしまったが、普段は誘いになんて乗らない。しかし、一度許してしまった由夏相手では分からないのが怖い所だ。もし彼女がそういう雰囲気にしてくれば、流されてしまうだろう。


「ふふっ、また練習する?」

「し、しない!」

「しないかー」

「なに、したいの?」

「うーん、どっちかって言うと、佑月のあの可愛くよがる姿が見たいかな」

「んなっ――」

「あはは、冗談冗談。個人的にはそうやって照れてる姿見られるだけで充分だよ」

「それで、よく恋愛相談? 乗ってくれるの?」

「それもあるけど、まあ人の恋愛の様子を見るの好きだからね」

「だから声かけてきたの?」

「まあそうだね。それで話してみたら面白いし放っておけないしで、普通に仲良くなりたくなったんだよね。後なんか気が合いそうだし」


 頭を撫でながら語る由夏の言葉を聞いて、ふと壮太の事を思い出した。壮太も告白してきたとき、色々やり取りしている中で「放っておけないんだ」なんて言っていた。

 何かそういう雰囲気があるのだろうか。よく体調的に放っておけないとは言われるが。ただ、由夏や壮太はまた少し違う気もする。


「それに佑月、あたしの事フラットに見てくれてるでしょ」

「フラットに……? まあ、由夏ちゃんは由夏ちゃんだし」

「みんな不良とか色々言って嫌煙されてたり、逆に王子様なんて変に遠い存在にされたり。そういうの気にしてないでしょ」

「不良だとは思うけど気にしてないね」

「思ってはいるんだ」

「だってタバコ吸ってるし。匂いは好きだけど……健康が心配だよ。若いと健康被害が大きいって何かで見たし……。せっかくできた友達が病気になるとか、嫌だよ?」

「そっか~」


 由夏は何かを考えるようにそう答え、撫でる手を止める。


「そういえば、よく禁煙するなら代わりに乳首を吸いたいなんて聞くよね」

「聞いたことないけど……したいの?」

「いや、そういうわけじゃなくてね、冗談だよ」


 なんだ、と佑月はほっとしような、残念なような表情をする。声音でそれに気が付いたのか、由夏は顔を覗き込み――お姫様抱っこでベッドに連れて行った。


「これはあたしの禁煙のためだから」

「やっぱりするんだ……」

「そんなこと言って、ちょっと嬉しそうじゃん」


 由夏が佑月の服を脱がそうとするが、抵抗しない。すでに、佑月の蕾は膨らんでいた。

 それは、もう由夏にとってはOKサインのようなもので。また、流れに任せて佑月は由夏に弄ばれてしまった。

 由夏は慣れているのか、二度目ともなるとあの時の事を思い出して、拒む気にも慣れない。


「んんっ……もっと、強く――」

「やっぱり、佑月ここ弱いんだね」


 由夏の禁煙のため、そして欲求を満たすため、それを女同士で済ませているだけ。そう言い聞かせて、佑月は身をゆだねていた。



「……由夏ちゃん、凄いうまいのなんで?」

「一人でするときにそういう漫画読んでるから……? んまあ、それ以上に佑月が分かりやすいからかな」

「そんなに……」

「弱い所だと声が明らかに大きくなるからね」

「そ、そんな声出てる?」

「隣に聞こえちゃうんじゃないかな~?」

「そんな……!」

「うそうそ。そこまでじゃないよ。けど結構声出てるよ」

「抑えてるつもりなんだけど……聞かれちゃうのかな」

「壮太に? それはもう大変なことになるだろうねぇ」


 由夏とするときは、舌と指だけで済むが、壮太ともなるとそれ以上の事もある。一体どうなる事やら、想像するだけで、顔から火が出そうだ。

 恥ずかしくなって、隣で一緒に横になっている由夏に抱き着く。


「こういう可愛い所、壮太には見せてあげないの?」

「ま、まだ、恥ずかしいから」

「あたしとはあんなことできるのに?」

「だって、女の子同士だし、あくまでも由夏ちゃんのためだから」

「その割には、パンツぐしょぐしょだよ」

「そ、それはただの生理現象!」

「けど佑月のその生理現象は、まだシたいってことだもんね?」


 何も答えない。沈黙は肯定と捉えたのか、由夏は佑月の下半身に手を伸ばす。佑月は相変わらず抵抗することなく、由夏の指を受け入れた。

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