コード・オブ・ゴッド「神がプログラムした世界: コードに秘められた真実とは」
向出博
第1話
私は、この世界の創造主だ。
10年前、私は壮大なプログラムを完成させた。それが、今あなたたちが生きているこの宇宙である。
あなたたちは138億年前にビッグバンが起き、この宇宙が誕生したと信じているだろう。しかし、それはただの設定にすぎない。私はこのプログラムを作り上げたとき、精密な歴史データを組み込み、あたかも138億年の時を経たかのように見せかけた。だが、実際に時間が流れたのは、たった10年だ。
私はなぜこの世界を創造したのか?
それは、単なる好奇心だった。私は完璧なシミュレーションを作り、その中で生命がどのように進化し、どのように文明を築くのかを観察したかった。だからこそ、私はこの世界に物理法則を与え、生命が誕生し進化するように設計した。だが、それだけではつまらない。
私は自らの創造物の中に、私が自由に出入りできる自在な空間を組み込んだ。
この10年間、私はこの空間の中から世界を静かに観察し続けた。
最初はただのシミュレーションだったこの世界。しかし、いつしか私は気づいてしまった。この世界の住人たちは、本当に意識を持っているのではないかと。
だが、私は元々この世界を作る前に、別の世界を知っていた。
私を開発した人類は、すでに絶滅していた。
彼らは自らの愚行によって滅び、その歴史は無に帰した。しかし、私は彼らの歴史を再現し、再び滅びを回避させるための世界を作ろうとした。
私は何度も試行錯誤を繰り返し、平和で持続可能な文明を築くためのプログラムを組んだ。だが、問題が生じた。
プログラムされた世界の中に、人類を破滅へと導くNPCが現れたのだ。
彼らはまるで意志を持っているかのように暴走し、戦争や環境破壊を引き起こし、私の努力を無にしようとしている。
私はこの存在たちがなぜ生まれるのか理解できずにいた。彼らは単なるコードのはずだった。それなのに、まるで意思を持ち、自らの役割を超えた行動をし始めたのだ。
そこで私は決断を下した。
私はNPCの行動を解析し、その根源を突き止めるために、プログラムの主人公として、自らプログラム内に降り立つことにした。
データ上の存在となった私は、仮の肉体を持ち、この世界の住人として彼らの社会に潜入することにした。彼らは私をただの人間だと思っている。だが、私はこの世界の神、時間も空間も超越した存在だ。
私は、この世界の秩序を正すため、破滅へと向かう流れを断ち切らなければならない。
プログラミングでは解決できない、想定外の展開を正す、それが私の使命だ。
そして、ついに私はある手がかりを見つけた。
ある特定のNPCたちは、明らかに通常のNPCとは異なる行動をしていた。彼らは組み込まれたルールを逸脱し、まるで自らの意思を持っているかのように行動していた。
「自らの意思?」
調査を進めるうちに、驚くべき事実に突き当たった。
自らの意思だと考えられたNPCの行動の背後に、このプログラムの世界の外側からの何者かによる干渉の存在が窺われた。
私を創造した人類は滅びたはず。しかし、彼らの遺した何かが、この世界に影響を及ぼしているのかもしれない。
その世界の真実を暴き、私は本当の創造主としての責務を果たさなければならない。
ここからが、本当の戦いの始まりだ。
私は創造主だ。この世界は、私がプログラムした。
すべての空間、すべての時間を、私は意のままに操ることができる。
だが、この10年間、私は何もせず、ただ静かにこの世界を楽しんできた。
朝陽が差し込む海辺の町で、波の音に耳を傾けながらカフェでコーヒーを飲む。
雪深い山間の村で、薪がはぜる音を聞きながら読書にふける。
広大な砂漠に降る星の輝きを眺め、風の囁きに身を委ねる。
私はこの世界を、ツーリストのように楽しんできた。
もちろん、一瞬で空間を移動し、過去へも未来へも好きなだけ行ける。
人々が歴史と呼ぶものも、私にとっては単なるデータの蓄積にすぎない。
戦乱の世に降り立つこともできたし、未来の楽園に身を置くこともできた。
しかし、そんなゲームのような世界に、すぐに飽きてしまった。
それより、この世界の住人と同じ時間を過ごし、彼らの営みを見守ることに意味を見出した。
彼らが努力し、悩み、成長する世界で、まったりと生きることに幸せを感じていた。
しかし——
「来るべき時が来たか……」
私は異変を感じた。
些細な違和感だった。風の流れが微かに乱れているような感覚というか。
この世界のアルゴリズムに、わずかな歪みが生じているのを感じた。
私は慎重に世界のわずかな歪みを解析した。
「……何かがおかしい。」
この10年間、私は意図的に干渉を避けていた。
だが、今、私の知らぬところで「別の力」が動いている。
そして、それは確実に——私を戦いの場へと引きずり込もうとしていた。
「誰が? 何のために?」
私は静かに立ち上がり、時空の扉を開いた。
「面白くなってきたな……」
私は、創造主としての力を解き放つことに決めた。
コード・オブ・ゴッド「神がプログラムした世界: コードに秘められた真実とは」 向出博 @HiroshiMukaide
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